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目が合って驚いて、そのおおきな目がもっとおおきくなって、すぐさま逸らされる。 誰だ?なんて思ってしまったけど私はこの人をよく知ってるはずだ。 スマホの、待ち受けで。 「いつまで無言でいる気なんだ、カイト。それと…すまない、名前を聞いてもいいか?」 「僕は音羽慎之介。こっちの隊長が霧島司君で、こっちの赤いのが辻魁斗君」 「赤いのって言うな!」 「…名字名前です。よろしくお願いします」 なぜか同じテーブルで食べることになり、それぞれ注文した料理が届く。 私の隣にはシン…じゃなくて音羽さんが。向かいには辻さん、その隣には霧島さんが座っている。 「どう?シンを推してくれる気になった?」 「……! あの時は本人だと気付かず、失礼なことを言ってすみませんでした」 「いいのに。楽しかったし、可愛かったし」 で、出た音羽さんのあまーいヤツ……! 顔が一瞬で熱くなり照れ隠しにみつ豆をつつく。横で音羽さんが「みつ豆もおいしそう」と呟いているけど、それなら一口どう?なんて気軽に“あーん”できる人じゃない。なんてったってアイドルですもの。 ……あれ、でも私、神崎さんに激辛オムライスをあーんって…された、ような…? 脳内にピシャーンと雷が落ち、あまりの衝撃に頭を抱えそうになった。 「シン、無理強いするのはよくないぞ」 「だって名字さんの待ち受けがカイトなんだよ。ずるいと思わない?」 「えっ、俺…?」 「…それはずるいな。名字さんはカイトが好きなのか?」 なんだか辻さんの扱いが不憫だ……! いじられキャラなのかな? いや、弟が可愛くて仕方ないいじめっこお兄ちゃんズだこれは。 「えっと…友達が辻さんのファンで、カッコイイからって待ち受けに設定してくれたんです」 「そうか…なら俺なんてどうだ?」 「えっ」 「あ、隊長抜け駆けする気だ。いやらしーい」 「……シン」 オフでも仲良いんだなこの人たち。なんか和む、けど、少しハラハラするのはなんでだろう…。 イケメンたちがわちゃわちゃしてるのは可愛いけどハラハラする…。 こうして改めて見るとよーくわかる顔の良さ。イケメンだと思っていたけど、よくアイドルだと気付かなかったな私…。このテーブルの顔面偏差値どうなってるの? 正直なところ顔は音羽さんが一番好みかも。だけど…あの人尋常じゃなく甘いから心臓がもたない…! ちらっと盗み見すると音羽さんはシュークリームにかぶりつき、唇についたクリームを舐めとっていた。イケメンは何をしてても様になるからずるいと思います、ええ。 「ん? 名字さんもシュークリーム食べたい?」 そう言って音羽さんはキョトンとする。 私、そんなに物欲しそうな顔してましたか…!? くそう、音羽さんとクリームの組み合わせで恥ずかしい記憶を思い出してしまった……! 「…ま、またクリームがついたら嫌なので、いいです」 「ついたらとってあげるよ」 つ、ついたらとってあげ…る…? え?とっ……え? さっきの音羽さんみたいに唇にクリームがついたら舐めとられ、る? え? だだだだめですムリですだめです!こんな真昼間に店内で…人前で…!いや人前は関係ないけど! ……って、舐めとるなんて一言も言ってないのになんで音羽さんにクリームを舐めとられる想像なんかしちゃったんだ私は……!!! もうヤダ。音羽さんのせいで私の頭がおかしなことになった。ううう。 混乱している私を見兼ねた辻さんが「大丈夫か?」と頭をぽんぽんしてくれた。辻さん優しい…。でも全然大丈夫じゃないですごめんなさい。 「あ!辻さん!手!」 「うわっなに、ビックリした。手?」 「さっき私の目を隠したときに、マスカラとかラメとかついちゃってませんか?」 「ん、ついてない。睫毛が当たってちょっとくすぐったかったけど」 辻さんは手のひらを確認してからすぐに首を振る。 くすぐったかったのか…そうか……なんだか恥ずかしいぞ…! じわじわ湧き立ってきた不思議な気持ちに居心地の悪さを感じる。それに目聡く気付いた辻さんに「今のどこに照れたんだよ…!」とつっこまれてしまった。辻さんだってちょっと顔赤いし人のこと言えないじゃないですか…! そんな私たちを静かに眺めていた霧島さんがぽつりと、とんでもない言葉を放った。 「ふたりともすっかり彼女と仲良くなったな……少し妬ける」 ちょ、ちょっと3Majestyさんは糖度下げましょう……!!! |