07

目が合って驚いて、そのおおきな目がもっとおおきくなって、すぐさま逸らされる。
誰だ?なんて思ってしまったけど私はこの人をよく知ってるはずだ。

スマホの、待ち受けで。


「いつまで無言でいる気なんだ、カイト。それと…すまない、名前を聞いてもいいか?」
「僕は音羽慎之介。こっちの隊長が霧島司君で、こっちの赤いのが辻魁斗君」
「赤いのって言うな!」
「…名字名前です。よろしくお願いします」


なぜか同じテーブルで食べることになり、それぞれ注文した料理が届く。
私の隣にはシン…じゃなくて音羽さんが。向かいには辻さん、その隣には霧島さんが座っている。


「どう?シンを推してくれる気になった?」
「……! あの時は本人だと気付かず、失礼なことを言ってすみませんでした」
「いいのに。楽しかったし、可愛かったし」


で、出た音羽さんのあまーいヤツ……!

顔が一瞬で熱くなり照れ隠しにみつ豆をつつく。横で音羽さんが「みつ豆もおいしそう」と呟いているけど、それなら一口どう?なんて気軽に“あーん”できる人じゃない。なんてったってアイドルですもの。

……あれ、でも私、神崎さんに激辛オムライスをあーんって…された、ような…?


脳内にピシャーンと雷が落ち、あまりの衝撃に頭を抱えそうになった。


「シン、無理強いするのはよくないぞ」
「だって名字さんの待ち受けがカイトなんだよ。ずるいと思わない?」
「えっ、俺…?」
「…それはずるいな。名字さんはカイトが好きなのか?」


なんだか辻さんの扱いが不憫だ……! いじられキャラなのかな?
いや、弟が可愛くて仕方ないいじめっこお兄ちゃんズだこれは。


「えっと…友達が辻さんのファンで、カッコイイからって待ち受けに設定してくれたんです」
「そうか…なら俺なんてどうだ?」
「えっ」
「あ、隊長抜け駆けする気だ。いやらしーい」
「……シン」


オフでも仲良いんだなこの人たち。なんか和む、けど、少しハラハラするのはなんでだろう…。
イケメンたちがわちゃわちゃしてるのは可愛いけどハラハラする…。

こうして改めて見るとよーくわかる顔の良さ。イケメンだと思っていたけど、よくアイドルだと気付かなかったな私…。このテーブルの顔面偏差値どうなってるの?

正直なところ顔は音羽さんが一番好みかも。だけど…あの人尋常じゃなく甘いから心臓がもたない…!
ちらっと盗み見すると音羽さんはシュークリームにかぶりつき、唇についたクリームを舐めとっていた。イケメンは何をしてても様になるからずるいと思います、ええ。


「ん? 名字さんもシュークリーム食べたい?」


そう言って音羽さんはキョトンとする。
私、そんなに物欲しそうな顔してましたか…!?

くそう、音羽さんとクリームの組み合わせで恥ずかしい記憶を思い出してしまった……!


「…ま、またクリームがついたら嫌なので、いいです」
「ついたらとってあげるよ」


つ、ついたらとってあげ…る…?

え?とっ……え? さっきの音羽さんみたいに唇にクリームがついたら舐めとられ、る? え?

だだだだめですムリですだめです!こんな真昼間に店内で…人前で…!いや人前は関係ないけど!

……って、舐めとるなんて一言も言ってないのになんで音羽さんにクリームを舐めとられる想像なんかしちゃったんだ私は……!!!

もうヤダ。音羽さんのせいで私の頭がおかしなことになった。ううう。
混乱している私を見兼ねた辻さんが「大丈夫か?」と頭をぽんぽんしてくれた。辻さん優しい…。でも全然大丈夫じゃないですごめんなさい。


「あ!辻さん!手!」
「うわっなに、ビックリした。手?」
「さっき私の目を隠したときに、マスカラとかラメとかついちゃってませんか?」
「ん、ついてない。睫毛が当たってちょっとくすぐったかったけど」


辻さんは手のひらを確認してからすぐに首を振る。

くすぐったかったのか…そうか……なんだか恥ずかしいぞ…!
じわじわ湧き立ってきた不思議な気持ちに居心地の悪さを感じる。それに目聡く気付いた辻さんに「今のどこに照れたんだよ…!」とつっこまれてしまった。辻さんだってちょっと顔赤いし人のこと言えないじゃないですか…!

そんな私たちを静かに眺めていた霧島さんがぽつりと、とんでもない言葉を放った。


「ふたりともすっかり彼女と仲良くなったな……少し妬ける」

ちょ、ちょっと3Majestyさんは糖度下げましょう……!!!


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