私は雷門と共に、エルドラドに対抗しうる偉人のオーラを集める旅へ参加することとなった。
タイムジャンプの先は三國志と呼ばれる時代だ。
目当てである劉備らに遭遇を果たしたものの、西園信介とのミキシマックスは失敗だった。天馬達は諸葛孔明の館を訪ねる彼らに同行し、再度機会を伺うことに決めた。

未来からの刺客が現れたのは、孔明の塔を登る途中のことだった。
関羽と張飛を操り、サッカーバトルを挑んで来た奴等は私のことを知らないようだった。
エルドラドとの関与性に疑問が生じたが、今は奴等に勝つことだけが目的。考えない事にした。
迎え撃つメンバー選出の際に、霧野が言った。
「白竜、リファ。お前達は敵と会うのは初めてだ。このバトルは控えていて、まずは俺達が戦っている敵をよく知って欲しい」
「分かった」
視線を感じた。白竜だった。
彼は霧野に向き直った。
「いいえ。敵は実際に戦って知るのが一番です。俺を出して下さい」
白竜の視線が再び滑る。
彼は私を鋭く睨み付け、依然、堂々と言った。
「見ているだけの奴とは、違うので」

雷門には特殊な思考回路の持ち主が多数居る事を、この旅に出るまでの練習で把握していた。
「リファ! うち頑張ってくるから見ててね!」
「……分かった」
そう言ってフィールドまで駆けて行く黄名子もそうだ。
彼らは私に、不必要に言葉を掛ける。
だからといって、どうというわけではない。
彼らがそうするのであればそれでいい。
しかし命令でもない言葉をこれほどまで掛けられた経験は無かった。適当な対応の仕方が分からない。
同時に、そうする彼らの目的も全く読めない。彼らの行為が私には異様にさえ感じた。
霧野がピッチを見つめ、また私へ言葉を落とす。
「白竜はしょうがないやつだな。……気にするなよ」
「気にする、とは」
「何って……白竜の態度だよ。まぁ、お前もあんまり刺激しないようにな……」
正体不明の者に対して警戒をするのは当然ではないだろうか。
ピッチを走る白い髪を目で追う。
「それは、彼は人一倍に警戒心が強い、という認識で良いのか」
「警戒心……というより、プライドだよ」
「プライド……」
曖昧な返答に感じられた。
しかし霧野もそれ以上喋ろうとはしなかったので私はそれに従った。
GKの劉備の行動で試合全体としては波乱だったが、個人としての白竜は完璧な立ち回りを見せていた。
ゴールを決めた彼のシュートは変わらず、光に溢れていた。一点の陰りもない。
勝利した後、天馬や黄名子らに囲まれていた白竜は不意に私と視線を合わせた。
彼は目元を歪ませ鼻で笑った。


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