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両手に白黒



「ハッピーバースデー、名前! 結婚して!」
「名前様、誕生日おめでとうございます。結婚しましょう」


なんでこうも素直にありがとうございますって言わせてくれないかなぁ、この人達。



「……あの」
「ん? なあに!?」
「どうかされましたか?」
「今日くらいそれ、止めませんか」



数秒だけ沈黙して、彼らの声が再び重なる。


「お前のことが好きじゃ! わしと結婚してくれんかの!」
「ユー! わたくしとウェディングしちゃいなさいましィ!!」
「言い方の問題じゃなぁいっ!!」



私は何を期待したのか。相手はお付き合いを前提に結婚申し込んでくるような双子なのよ、まともな返事を返してくるわけないじゃない。

「えー違うの?」
「はて……何がいけなかったのか」
「内容を変えろって言ってるんですよ、内容を!」
「だってぼく名前と結婚するんだもん☆」
「成人男性が『だもん☆』じゃないです。『だもん☆』じゃ」
「まさか誕生日の祝いが不要でしたとは……申し訳ありません。代わりにただ今から、その分だけの愛を囁かせて頂きま……」
「誕生日の話じゃありません!」

ノボリさんとクダリさん、かのサブウェイマスターに揃って見初められてしまった私は、毎日こんな調子で二人から求婚されている。誤解を避ける為にここだけはハッキリさせておくけど、私はどちらとも愛し合っていなければ付き合ってもいない。好意は嬉しいし二人共嫌いなわけじゃないんだけれど、でも段階ってものがある。いきなり結婚なんて出来るわけがない。


「はぁ……誕生日をお祝いしてくれる気持ちはありがたく受け取りますけど……」

毎日こんな顔をしていたら、そのうち眉間の皺が取れなくなってしまいそうで怖い。女性としての幸せ(一応ね。)が、同時に女性としての危機を招いてるなんてどういうことなの。


「大丈夫名前! ぼく誕生日プレゼントも用意してきたから!」
「ええ、わたくしもプレゼントを用意して参りました。大丈夫です」
「全く大丈夫でも無ければ、そういう問題でも無いです……。あと言っておきますけど」
「プレゼントはぼ……」
「贈り物はこのわ……」
「プレゼントは自分自身とか、冗談みたいなこと言わないで下さいね?」

口元を除いて瓜二つな彼らの顔が、同時に面を食らった表情をして固まってしまった。

完璧な図星だったのね。



「っ、さすがは名前様! わたくしのことをこんなに理解されているなんて!」
「わああ名前はホントにぼくのこと分かってる! これってやっぱりウンメイ!」
「あなた達がワンパターン過ぎるんです!!」
「もう結婚するしかありません!」
「もう結婚するしかない!」
「お願いですから、結婚から離れて下さい!」

この双子が厄介なのは、無駄にポジティブなところだった。もうどうしたらいいんだろう。
と、気を抜いたその一瞬。


「名前様!」
「名前っ!」
「わっ……!?」



クダリさんに抱きつかれ、ノボリさんに右手を掬い取られた。

はっとした時には、前髪と手の甲に二人分の口づけが落ちる感触。

思わず息を飲んだ。急に全身が熱くなる。
多分耳まで真っ赤になっている私に、白い彼も黒い彼も嬉しそうに笑った。


「愛しております!」
「愛してる!」



「……っ、もう!」



こんなのって、誕生日も何もあったものじゃないわ!






誕生日おめでとうお姉ちゃああああああ(いちいち喧しいわ

低クオリティながら感謝と愛を込めて花影さんに捧げます!
誕生日ネタなのに誕生日ネタじゃないという!だって気付いたらサブマスが結婚としか言ってなかったんです、びっくり!

姉妹(はぁと)なんで結婚出来ないけど、愛してるよ花影お姉ちゃん!!


(11.11.7)



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