「そういや今日は総悟の誕生日だったなぁ。」


近藤の呟いた言葉に、四季は目を見開いた。



侍ガール!




「た、たたた誕生日!?たいちょ、沖田隊長のですか!?」

「え…う、うん。7月8日は総悟の誕生日なんだ。」




勢いで胸ぐらを掴みながら問い質す四季に、近藤は驚きつつも頷く。




「つーかお前知らなかったのか?」

「だって、だって…。」




呆れたように溜め息を吐く土方に、四季は泣きそうな顔をしながら屯所内をウロウロとし始めた。どうしようどうしようと繰り返しながら歩き回る四季の頭の中は、沖田へのプレゼントでいっぱいいっぱいだった。




(プレゼントがありませんなんて言ったら…、斬られちゃう!!)




考えていることは失礼極まりないが、彼女はこれでも真面目なのだ。何故これまで一緒にいて気付かなかったのか不思議だと土方は思った。




「そんな焦んなよ。総悟はオメーから貰えりゃ何だって喜ぶさ。」

「ダメです!ちゃんと考えなきゃ、何されるか分かったもんじゃない!!」

「焦る理由はそこか。」




沖田にはいつも殺されかけてはいるが、ここまで一方的な片思いだと同情してしまう。彼が四季を好いているのは誰から見ても一目瞭然だが、肝心の四季本人は沖田の日頃の行いのせいか、彼女自身が自分に関すること(主に恋愛関係)に鈍いせいか、全くと言っていい程沖田の気持ちに気付く様子はない。偶にそれらしい雰囲気を出しはするが、それ以上発展しないのが問題だ。

未だにウロウロとしている四季を見て土方はもう一度溜め息を吐くと、ニヤリと口角を上げた。




「だったら私がプレゼントですーとか言ってみたらどうだ?」




総悟のヤロー喜ぶぞ?なんて冗談のつもりで言った言葉だった。けれど何を勘違いしたのか、四季は「あ、その手があったか!」と指をパチンと鳴らすと、嬉しそうに鼻歌を歌いながら沖田の部屋へ向かっていった。




「え、マジ?」






───
──────




「隊長、四季です。入っていいですか?」




昼寝をしていた沖田は、四季の突然な訪問に飛び起きた。

大丈夫だと伝えると、少しだけ開かれた障子の隙間から、ひょこっと四季が顔を出した。




「何でィ。」

「えへへ…隊長、今日お誕生日じゃないですか。」




ニコニコと笑いながら目の前にちょこんと座った四季に、沖田の頬も自然と緩んだ。何より好意を寄せている相手から誕生日を祝ってもらえるのだ。嬉しいことこの上ないだろう。

差し出されるであろうプレゼントに期待する沖田に、爆弾が投下された。



「プレゼントは私です!」




沖田は自分を殴りたくなった。


確かに今、四季は自分がプレゼントだと言った。つまりそれはそういう意味で、そういうことなんだ。いいのか?本当にいいのか?冗談なんてオチは勘弁してくれよ?


心中で葛藤するも、自分にとって良い方にしか考えられず、抑えても抑えても口角が上がってしまう。




──今日こそは、




沖田は真っ直ぐに自分を見つめる四季に正座をして向き直った。




「四季。俺ァお前が、」

「今日は隊長のためなら何でもしますよ!ザキさんいないからパシリでもいいです!!」

「………………………は?」

「報告書だって片付けちゃいますからね!!」




任せてください。腕捲りをして、床に散らばっている報告書を集め始めた四季。


あぁ…そうだよな、四季だもんな。


誰かこの馬鹿どうにかしてくれと心で叫んだ沖田の目には涙が浮かんでいた。













プレゼントは期待するべからず


(あれ?どうしたんですか隊長。)

(何でもねーよ。)

(あ、お誕生日おめでとうございます!!)

(…………おう。)






※やっぱりまんざらでもない沖田さんだった(笑)










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