7月7日、七夕。
一年に一度、彦星と織姫が天の川越しに互いの愛を確かめ合う日。
侍ガール!
その日も2人で巡回していた沖田と四季は、公園に差し掛かったところで見慣れた人物を発見した。
「咲夜くん。」
「あ、四季………………と、沖田。」
「よぉ馬鹿猫。」
会って早々に喧嘩を始めた沖田と咲夜に四季は呆れたような溜め息を吐いたが、とうの本人達がそれに気付く様子はない。ヒートアップしていくアホ同士のアホな口喧嘩に四季は頭を抱えたくなった。
「いいだろィ?俺達ァ今2人仲良く巡回中でさァ。」
ガシッと四季の肩に腕を回した沖田は、ニヤニヤとしながら咲夜を見る。この季節に体を密着すると非常に暑い。けれど沖田の脳内の9割を占める「馬鹿猫に四季は渡さねー」が彼にこの糞暑さを忘れさせているのだった。悔しそうに沖田を睨み付ける咲夜に気分を良くしたのか、沖田はさらに言葉を付け足す。
「今日は七夕だったねィ。まるで彦星と織姫でさァ。」
ピクリと、咲夜がそれに反応した。
咲夜は俯きながらニヤリと口角を上げたかと思えば、近くにあった木の棒を拾い、沖田と四季の間に無理矢理線をひいた。
「馬鹿め!!彦星と織姫は天の川で引き裂かれてるんだよ!」
ハハハハハ!とさながら悪の帝王のように笑う彼に、沖田は顔を引き吊らせた。形勢逆転。咲夜は2人の間に立つと、沖田のを見ながら「ハイ俺天の川ー。」とフラダンスのような踊りを始めた。
しかし、こんなことでへこたれる真選組一番隊隊長、沖田総悟ではない。沖田は未だにフラダンスもどき(しかも何気に上手い)を踊る咲夜を蹴り飛ばすと、彼も落ちていた棒を拾って、先ほど咲夜が描いた天の川(ただの線)にガリガリと橋を架けた。
「川を渡るには橋を架けないとねィ。」
「チッ…こんなもん消してやる!」
「テメッ…!何しやがんでィコノヤロー!!」
これまた無駄に上手く描かれた沖田の橋は咲夜の足によって消され、新たに咲夜は川の番人と言って怪物(ハッキリ言って下手くそな)を描いた。
「どうだ!これで川を渡れないだろう!!」
「ハッ!そんな怪物、俺のS・彦星ブライアントロドンで食ってやりまさァ!!」
「何おぅ!だったら俺は天の川・キャットザウルスだァァァァ!!」
あまり幼稚な2人に、もはや放置されている四季は本気で他人のフリをしたくなった。
公園で遊んでいた子供達は不思議そうな顔をしたり、「ちんぴらけーさつだー!」と指差して叫んだり。あぁ、また真選組のイメージダウンになる…。と、四季は遠い目をしていた(それでも2人を止めないのはコレが彼女にとって日常と化しているからである)。
「どうだ沖田!俺の最強にして最高の天の川の番人、ウルトラスーパーグレートスペシャル・天の川・ド・七夕ザウルスだ!!」
いつの間にか進化していた2人の怪物(咲夜の場合、天の川の番人だが)は、既にテニスコートの片面程の大きさになっていた。
「フッ…馬鹿め。」
口角を上げた沖田は、ポイッと持っていた棒を投げ捨てた。
「このデケー怪物で川を渡ることができるんでさァ!!」
「な、なんだと!?」
「油断しやしたねィ。真選組一番隊隊長なめんなよコノヤロー。」
真選組は全く関係ない上に、元は幅的にそれ程大きくない咲夜の描いた天の川(もといただの線)を渡るのにそんなに大きな怪物達が必要だったのかは疑問であるが、とりあえず今回の勝負は沖田の勝利で幕が閉じた。
「ああァァァァ!!卑怯だぞ沖田!」
「何言ってんでィ、作戦勝ちでさァ。」
四季、行きやしょう。そう言って沖田が四季の手を握った時だった。
「ハイィィィィィィ!!俺天の川ァァァァ!!」
やっぱり負けを認めていなかった咲夜が、2人の間に入ってガッチリとそれぞれと腕を組んだ。
「オイ馬鹿猫、離しなァ。俺ァヤローと腕組む趣味はねーんでさァ。」
「だーかーらー、俺は天の川だっての。」
「まあまあ2人とも、偶にはいいじゃないですか。」
四季がクスクスと楽しそうに笑う。それを見た沖田と咲夜も、釣られるように笑みを零した。
向こう岸の貴方へ
(星に願おう)
(愛しき人が、いつも笑顔であるようにと)
※とりあえずアホな沖田さんとさっくんが書きたかった
※今年も七夕は空曇ってたな…。