久しぶりの非番に、以前お妙さんに頂いた着物を着て出かけることにした。
侍ガール!
「まぁ!よく似合ってるわよ四季ちゃん。」
着付けを手伝ってくれた女中の梅さんはそう言ってフワリと頭を撫でた。
「すみません。お忙しいのに……。」
「あら、いいのよ?四季ちゃんにはいつも手伝ってもらってるもの。」
それから梅さんは小さめの髪飾りを手に取ると、私の前髪にそっとつける。
桜をモチーフにしたそれは、父上が母上にプレゼントしたものらしい。
もうそんなのを付ける年じゃないと、母上は私に譲って下さったのだ。
けれどやはり、日頃こんなものを付けないせいか、どうも違和感がある。
鏡の中の自分とにらめっこしていると、梅さんはクスクスと笑った。
「大丈夫よ。四季ちゃん、とっても綺麗だわ。」
「…でも……。」
「心配なら山崎さんあたりにでも見てもらいましょ。」
梅さんは半場強制的に私をザキさんのいるであろう中庭に連れて行った。
中庭には予想通り、ミントンのラケットを素振りするザキさんがいた。
仕事終わってるのかな……。
「山崎さん!」
「あ、梅さん!と………!」
梅さんがザキさんを呼ぶと、振り返ったザキさんは驚いた顔をした。
そのままザキさんはピキリと固まって動かなくなった。
「あの、…ザキさ、」
「きょきょきょ局長ォォォオ!!大変です!!副隊長がァァァァァ!!」
「なんで叫ぶんですかァァァ!!」
急に叫び出したザキさんを止めようとしたけれど、時すでに遅し。
ドタバタと音を立てて、近藤さんと土方さん、沖田隊長がやってきた。
「四季ちゃんがどうしたんだ!?」
「風邪でもひいたか!?」
「怪我でもしたんですかィ!?」
「違うから!違うから!そうだとしても風邪とか怪我だけでさわがないで!?」
あまりの勢いに驚きつつも、少々過保護な発言に突っ込んだ。
何?私が風邪ひいたり怪我した時ってこんな騒がれてるの?
えっ?本当に?恥ずかしいんだけど!?恥ずかしいんだけど!?
そんなことを考えて、若干引き気味になっていると、ようやく3人の視線がこちらを向いた。が、
「…四季ちゃん…!」
「…おまっ…!!」
「……。」
私を見るなり、3人はさっきのザキさんのように固まった。
何なの?似合わないの?似合わないのか?
そんな固まる程変かコノヤロー!
え?泣いていい?泣いてもいいですかね?
なんで梅さん笑ってんだよォォォオ!!そんなにダメなの!?
だんだん恥ずかしくなってきてしまった私は、部屋に戻ろうと方向転換する。
「ちょっ…四季!!待ちなせェ!!」
グイッと腕を引かれ振り返ると、焦ったような顔の隊長がいた。
「……なんですか。」
少し拗ねたように言ってみる。
すると、何故か沖田隊長は、私より不機嫌そうな顔をした。
「そんな、…そんな着飾ってっ……どこ行くんでィ!?」
「……………は?」
今にも泣きそうな隊長はまるで小さな子供で、私はそれに目を見開いた。
「…いつもはそんな格好しねェのに、なんで、」
「いや…あの、」
完璧にいじけモードになった隊長は面倒臭い。とにかく面倒臭い。
なんでこの人はいじけているのだろうか。
これは私が悪いのだろうか。
「四季には、そんなに大事な野郎がいるんですかィ?」
「いやいやいや…なんで!?」
「…そんなに綺麗な格好で会いに行くほど大事な野郎が……。」
「話を聞いて!?」
隊長達は、なんだか誤解をしているみたいだ。
未だにクスクスと笑っている梅さんと顔を見合わせてから、溜め息をひとつ。
「隊長。」
「……なんでィ…。」
「私、別に誰かに会いに行くんじゃないですよ?」
「………は?」
間の抜けた声を出した沖田隊長と、そんな隊長と同じように驚いた顔をする近藤さん達を見て、思わず笑ってしまった。
「着てみただけです。変なら着替えますよ?」
そう言って今度こそ本当に部屋に戻ろうとしたけれど、やっぱりそれは沖田隊長の手によって阻止される。
「……て、いい。」
「え?」
「き、替えなくて、いいって、言ってんでィっ!!」
顔を真っ赤にしながら言う隊長に吊られてか、私の顔も赤くなる。
なんだかよく分からなかったけど、その後みんなが似合ってると誉めてくれたので嬉しかったです。
あれ?作文?
心配なんです
(知らない野郎に持ってかれるんじゃないかって、)
(だって誰にも渡したくないから。)
※ヒロインの愛され具合といじけた沖田さんが書きたかっただけ(笑)
※本当に彼氏でも出来た日にゃ真選組総出で彼氏抹殺だな。
※あくまで私の妄想☆