その背は二度と振り返ることなく






行かないでと泣き叫んでも、少しずつ遠くなっていくその背中はもう、泣き虫だった昔の貴方ではないのだと私に言っているようで、嬉しいのと誇らしいのと、ちょっとだけ、寂しくもあった。





「もっと強くなって、大事なもん全部守れるようになったら迎えにくる。」





いつだか貴方はそう言った。

真剣で真っ直ぐなその目に嘘はなく、頷いた私にほんの一瞬だけ見せたあの笑顔は今でも鮮明に思い出せる。

約束よ。差し出した小指で指切りげんまんして、珍しく優しかった貴方はそっと私の頭を撫でてくれた。





「指切りげんまん、」

「嘘ついたらなまえが俺を嫌いになる。」

「なにそれ。」

「そうすりゃ俺は嘘つけやせん。」





卑怯者でも、人殺しでも、嘘つきだけにはならない。この約束は絶対に守ってみせる。たまにくる電話でも、手紙でも、貴方は口癖のようにそう言った。





「…そう、言ったじゃない。」





目の前の冷たくなった彼は、私の言葉に反応することもなく静かに眠っていた。

どうして。

どうして目を開けてくれないの。どうして私の名前を呼んでくれないの。

どうしてみんな私を置いていくの。





「そーちゃん、」





目を開けて。





「そーちゃん、」





どんな意地悪でもいい、声を聞かせて。





「…そーちゃん、」





行かないで。



今度こそ私の手が届かない遠いところへ行ってしまった大切な人。

信じ続けた約束も、想像した幸せな未来も、泡みたいに消えていく。





「おねがい、」





私も連れて行って。



















その背は二度と振り返ることなく


(届いた背中は冷たかった)






※モネ様、大変遅くなってしまい申し訳ありませんでした。

※沖田でシリアスとのことだったので、死ネタにしてしまいましたが大丈夫だったでしょうか?

※リクエストありがとうございました!!











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