グラグラと揺れる視界の中に、金髪のポニーテールが飛び込んだ。
サッカー日誌
「…え、」
突然現れた目の前の人物に、俺は目を見開く。
そいつは、帝国の選手が蹴ったボールをいとも簡単に取ってみせた。
太陽の光にキラキラと輝く髪も、予備ユニフォームの袖から伸びる色白な腕も、俺が知っている人物のものだ。
「朝倉…?」
振り返った朝倉は、一瞬悲しそうな顔をしてから大丈夫かと聞いてきた。それに頷くと、今度はニコリと笑って前を向いた。
「少しだけ、少しだけなら力になれると思う。だから、」
諦めないで。
そう言った朝倉は、ボールを蹴ってフィールドを駆け上がった。
スライディングやタックルを物ともせず、あっという間に帝国のゴール前に立った朝倉は、ボールを高々と蹴り上げる。宙に浮かんだボールを飛び上がった朝倉がゴールに向かって思いきり蹴った。
「っ…源田!」
帝国のキャプテンが叫んだ。するとキーパーは慌てたように必殺技を出し、ギリギリのところでボールを止めた。
「……スゴいな、アイツ…。」
隣で呟いた風丸に、俺はただ頷いた。
それからは、一方的だった試合がボールの奪い合いになったり、俺達もパスが繋がったりするようになった。
少しずつ、少しずつ、流れが変わってきてる。
「よし!みんな最後まで諦めるな!!」
その時だった。
視界の隅で、誰かが倒れるのが見えて、観戦している生徒が悲鳴を上げた。
「だっ…誰か!救急車を呼んで!!」
倒れていたのは朝倉で、苦しそうに口元を抑えていた。
ドクリ、心臓が音を立てる。
「朝倉!!」
倒れた朝倉が目を開けることはなかった。
希望は絶望に
(自分の体が、)
(冷めていくのが分かった。)