転校から2週間程経ち、学校生活に慣れてきた頃。
校内は「サッカー部、帝国学園との練習試合」の話題でいっぱいだった。
サッカー日誌
「聞いた?サッカー部の練習試合の話。」
「知ってる!あの帝国とやるんでしょ?」
朝、登校した私の耳に、女子達の騒ぐ声が聞こえた。
「勝っちゃったりしてね!」
「無い無い。有り得ないから。」
キャハハハと笑う彼女らをよそに、私は教室へ向かう。
席に着いてなんとなくグランドに目を向けると、そこでは噂のサッカー部が練習をしていて、ゴール前──キーパーのポジションには、彼がいた。
「いいぞー!!ナイスパスだ壁山!」
「はいッス!!」
廃部の危機だというのに、呑気なものだ。
帝国学園サッカー部は40年間無敗の成績を誇る、フットボールフロンティア優勝の常連校である。
そんな帝国と未だ人数も足りていない雷門サッカー部では試合どころの話ではない。一方的なものになるのが目に見える。
「さすがだな風丸!すっげー速いぜ!!」
「いや、まだまださ。」
「よーし、この調子で頑張ろうな!!」
どうして笑っていられるのか。
どうしてあんなに前向きでいられるのか。
HRの5分前を知らせるチャイムが鳴り、慌てて片付けを始める彼らに、少しだけ頬が緩んだ。
吊られ笑い
(楽しそうに笑う彼に、)
(思わず吊られる自分がいた。)