「よう、久しぶり。」
サッカー日誌
最近、暑くなってきた。坂を登ったためか汗で少し濡れている額を風がふわりと冷やしてくれる。ここに来るのはいつ以来だろうか。"大海涼"の名前が見えたところで足を止める。随分と長く会っていなかった幼なじみは、最後に見た時と同じように冷たい墓石の中で眠っていた。
「ちゃんと会いに来なくてごめんな。」
そっと花を供えて手を合わせる。
地区大会優勝の知らせとサッカー部のみんなの事と。話したいことがたくさんあった。他の誰よりも聞いて欲しかった。
「サッカー、また始めたよ。」
ずっと逃げるばかりで、立ち向かおうとしなかったのに今更だ、と彼は呆れるだろうか。馬鹿と言って怒るだろうか。
目の前の墓石は喋らないけれど、私の都合の良い幻覚かもしれないけれど、なんとなく笑ってくれているような気がした。
「キャプテンがさ、変なん奴なんだ。」
お世辞にも頭がいいとは言えなくて、デリカシーがなくて鈍い。人のことをよく巻き込んだりするし。無駄に声がでかい。
「でも、温かくて真っ直ぐで優しくて、」
本当に、本当にサッカーが大好きなサッカー馬鹿。
「お前といい友達になるよ。」
2人が一緒にボールを蹴ることはないけれど、もしも会えたならきっと。
空想未来
(もしもここに君がいたなら)