24.







待ちに待った決勝戦、円堂はどうしてか悲しそうだった。





サッカー日誌





数十分前、帝国メンバーが深々と頭を下げて謝ってきた。ピリピリしていた染岡も渋い顔はしていたけれど「まぁ、仕方ねぇしな。」と言ってなんとか和解することができ、一件落着。試合が始まるまで昼寝でもしようかとベンチに戻ろうとしたところ、グッサグサと突き刺さる視線が痛くて嫌々振り向くと、素敵にゴーグルマントな帝国のキャプテンが真っ直ぐにこちらを見ていた。私なんかしたっけ?思い当たらないのでとりあえずへらっと笑って会釈する。あ、近付いてきやがった。「お前、練習試合の時の…。」「どーも、」早くどっか行け周りから注目あびてるよゴーグルしてるから気付かないんだろ。





「試合、出るのか?」

「まぁ…一応スタメンなんで。」

「そうか。」





女子選手が珍しいのかなんとも言えない表情で私を見るゴーグルマントは、気が済んだのか視線を私の顔まで持ってくると「鬼道有人だ。」と自己紹介をしてきた。





「あ…うん、よろしくな。」

「お前がどんなプレーを見せてくれるのか楽しみにしている。」





偉そうに鼻で笑って帝国側のベンチに戻っていったゴーグルマント、もとい鬼道を殴りたいと思ったのは言うまでもない。






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「わーい、絶不調だね円堂。」

「ふざけるな、負けるぞ。」





試合が始まってから数十分。豪炎寺の眉間にはこれでもかというほどに皺が寄っていて、完全なるとばっちりを受けている私は恐怖に冷や汗を流しています。「染岡、バトンタッチ。」「勘弁してくれ。」さすがの染岡も今の豪炎寺は怖いらしく、顔を引き吊らせている。





「円堂に喝入れしてこようかな…。」





帝国も円堂の不調には既に気がついているだろう。ただでさえ「皇帝ペンギン2号」というゴッド・ハンド対策の強烈な技に苦戦しているのに、これ以上つまらないミスをして追加点でも入れられたら私達は確実に負けてしまう。あぁもう、だから不戦勝にしちゃえば良かったんだよあの馬鹿。溜め息をついて円堂のいる方に足を進めようとした時だった。





「待て、朝倉。」





声の主はピンク坊主の強面ストライカーで、





「あいつは、こんなところで負けるような奴じゃねぇ。」





だから、大丈夫だ。その表情は不安そうだったけれどとても真剣だった。





「……染岡、」

「あ?」

「それは私としては全然構わないんだが…、」





既にエースがファイアトルネード構えてます。















喝っ!!


(おぉぉおいぃぃぃ!!)

(目が覚めたか?)

(お前が目ェ覚ませボケ!!唯一のキーパーになにしてんだ馬鹿!!)

(え、円堂!大丈夫か!?)

(染岡、俺ひよこが沢山見える。)









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