20.





「醤油ラーメンと餃子2つ!」





サッカー日誌





本日よりしばらくの間雷雷軒にお世話になるということで、只今朝倉姉弟は響木さんのお手伝いをしています。客の少ない店だと思って油断していたのだけれど、夕飯の時間をちょっと過ぎたあたりになると仕事帰りのサラリーマンがわいわいとやってきて大忙しだ。オーダーを受けたり皿洗いをしたりして慌ただしく動いている私を見て、響木さんはニヤリと笑うのだった(はいはいすいませんね!!この店はすごくお客さん来るんですね!!舐めてましたごめんなさい。)。





「泉!3番テーブルに餃子運べ。」

「おーう了解。」

「2番に味噌ラーメン。」

「ちょっ……早い早い!!え?イジメ?」





私と響木さんの漫才みたいなやり取りに、お客さん達は笑った。中には笑いながら「おやっさん、女の子いじめちゃダメだよ。」なんて言ってくれる人もいて、今更ながらいい店だなと思った。





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「あー…。」





暖簾をしまってカウンターにぐでーんとしていると、大きな手が頭に降りてきた。





「疲れたか?」

「うーん、でも楽しかったよ。」

「そうか。」





嬉しそうな顔をした響木さんに思わず吹き出すと、軽く叩かれた。それにしても、毎日あれだけのお客さんを1人で相手しているとはすごいなこの人。これじゃいつぶっ倒れてもおかしくないや。「死なないでね。」「なんだ急に。」なんとなく、見えないこの先に不安を感じて呟くと呆れたように溜め息を吐く響木さん。あれ、ちょっと本気だったんだけどなあ。相変わらず頭に置かれたままの温かい手にウトウトし始めた。宿題やらないといけないのにな。明日、豪炎寺あたりに見せてもらおう。





「泉、」

「んー?」

「今日、お前のとこのサッカー部が来たよ。」





朦朧とした意識の中では響木さんが何を言っているのかよく分からなくて、今にも閉じてしまいそうな目を擦りながら生返事をする。それでも響木さんの発した「サッカー」という単語だけはちゃんと聞き取れてしまうのだから、私もかなりのサッカー馬鹿だ。





「監督になってほしいんだと。」





少しだけ声が震えたような気がした。どこか苦しそうで、悲しそうで。





「俺は、サッカーをしてもいいのか。」





起きて、ちゃんと話を聞かなきゃいけないのに。睡魔ははそれを待ってはくれない。だんだんシャットアウトされていく世界の中、最後に見えたのは眉を八の字にして無理矢理笑う響木さんの顔だった。















叶うのならもう一度


(あの頃と同じ顔をした貴方と)

(サッカーをしたい)










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