楽しそうに笑う彼女に、思わず溜め息を吐いた。
サッカー日誌
今日は委員会や個人の用事が重なって人数が集まらないため、部活は自主練になった。たまたま委員会のなかった俺と朝倉は、イナビカリ修練所で練習をしていたのだが、
「あははは!コレ楽しいな豪炎寺!!」
「………。」
イナビカリ修練所は決して楽しむためのものではない、筈だ。あの円堂さえもヘトヘトになるここでの練習を難なくこなす彼女は化け物か。最大レベルで滝から流れる丸太に次々と飛び移る朝倉に顔が引き吊った。
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「すごいな、お前。」
帰り道、途中のコンビニで買ったオレンジのアイスを美味しそうに頬張っている朝倉にそう言うと、当の本人は意味が分からないというようにキョトンとした。
「俺でもへばるぞ、イナビカリ修練所は。」
苦笑すれば朝倉はふーん、とあまり興味なさげに返してから、残ったアイスを口に入れた。
汗をかいたせいか、ふわりと身体を包む風が冷たく感じる。朝倉はアイスを食べていたが寒くないのかと隣に視線をやれば、案の定寒そうに腕をさすっていた。
「寒っ!!」
「アイスなんか食べるからだろう。」
「いや、だってアイスの誘惑に勝てなかったんだよ。」
仕方ないだろ!と頬を膨らませた朝倉に飴玉を差し出すと、あっという間に嬉しそうな顔になった。高いとも低いとも言えない位置で結われた髪が尻尾のようにフルフルと揺れる。犬かお前は。
「あのさ、」
カラカラと飴玉を口の中で転がしながら、思い出したように朝倉が話し始める。
「今は変わらないかもしんないけどさ、やっぱ私は女だからその内みんな追いつくと思うぞ。」
「……?」
「だーかーらー、イナビカリ修練所の話!」
あぁ、興味がなかったんじゃないのか。
どうやら今の今まで返答を考えていたらしい。案外真面目なところもあるみたいだ。気付かれないよう小さく笑った。
「みんなはこれからだよ。これから強くなる。」
静かに、だけど力強くそう言った。
どうしてだろう。その言葉を聞くだけで、その笑顔を見るだけで、無敵になったように感じる。
「次は決勝、絶対勝とうな!!」
シュートは任せた!そう言ってニッと笑った朝倉に「任せておけ」と短く返すとまた、嬉しそうな顔をした。
真っ赤に燃える
(夕日に照らされた君の笑顔が)
(とても綺麗に見えた)