泉ちゃんが入部してから一週間がたった。
サッカー日誌
「秋!」
ドリンクを運んでいると、委員会で遅れていたらしい泉ちゃんが駆け寄ってきた。
「それ、運ぶの手伝うよ。」
「ありがとう。」
名前で呼び合うようになってから、泉ちゃんと一緒にいる時間が長くなった。部活の間、泉ちゃんはほとんど円堂くんと練習しているので(泉ちゃんとサッカーがしたいと騒いで円堂くんがシュート練に拉致するのが最近日常化された光景)、私達マネージャーといる時間はかなり少ない。だから必然的に仲良くなるのにも時間がかかるのだけど、同じクラスというのが手伝ってか、私とは直ぐに仲良くなった。優越感を感じないと言ったら嘘になる。
「あれ?泉ちゃん膝怪我したの?」
「ん、あぁ…これか。」
ふと足元を見れば、色白な泉ちゃんの足に絆創膏が貼られていた。少し血が滲んでいるそれはとても痛々しい。泉ちゃんの話によると、昼休みにサッカーをしていたところ、転んで擦りむいてしまったらしい。
「だけど豪炎寺が手当てしてくれたから大丈夫!!」
「え、豪炎寺くん?」
「うん、そう。」
いやあ、私は手当ていらないって言ったんだけどな。アハハと笑った泉ちゃんを横目に、気づかれないように小さく溜め息を吐いた。
悔しい。確かに私は豪炎寺くんよりも泉ちゃんといる時間は少ないかもしれないけど、それでも怪我をしたその時に、手当てをしたのが私じゃないことが悔しい。私だって友達なのに、仲間なのに。
「秋、どうした?」
「え、」
気付けば泉ちゃんが私の顔を覗き込んでいて、少し心配そうな顔をしていた。
「あ、ごめんね!その……怪我、痛そうだったから。」
慌ててそう言うと、その場にドリンクを置いた泉ちゃんはニッと笑って私の頭を優しく撫でた。
「心配してくれてありがとな。」
あ、やっぱり私の方が仲良しかも。
一週間目のヤキモチ
(私だって、仲良くなりたいもの。)