13.







サッカーを始めた理由は、彼に誘われたから、なんて簡単で適当な理由だった。



サッカー日誌




「涼が死んだのは私のせいだ。」




握った拳が、痛かった。ただ話しているだけなのに心臓がドクリと嫌な音を立てて、脳裏に浮かんだあの日の光景に泣きたくなった。




「気を失って入院して、結局葬式にも行けなかった。」




目を覚ましたその時、真っ先に聞かされた彼の死に、涙も出なかった。救えなかったのは、殺したのは私だ。なのに誰も私を責めなくて、私が悪いのに、それに誰かが頷いてくれることはなかった。




「サッカーするとな、あの日のこと思い出して怖くなるんだよ。」




静かな世界の中で、赤く染まったサッカーボールが足元に転がってくる。もう二度と、涼が私の隣を走ってくれることはないんだと思うと辛くて、苦しくて、気付いた時には大好きだったサッカーを遠ざけるようになっていた。




「私のせいで涼は未来がなくなったのに、私が、幸せになっていい筈ない。」




声が、震えた。目の前で円堂が苦しそうな顔をしている。その向こう側で、豪炎寺がジッとこちらを睨んでいた。




「今のお前は、そいつを理由にしてサッカーから逃げているだけだ。」




シンとしていたバスの中で響いた声に、思わず肩を揺らした。鋭い視線が突き刺さる。




「ハハ……豪炎寺は、意外にはっきり言うな…。」




だけど彼の言ったことは何一つ間違っていない。苦しいから、辛いから、だからサッカーをするのをやめた。サッカーが嫌いなんだと自分に言い聞かせて。




「でもやっぱり、好きなものに嘘はつけないって分かったんだ。」




いつの間にか、意志とは反対に心はサッカーを求めていた。




「円堂、」

「…?」

「私さ、やっぱりサッカー好きだ。」













始まりはここから


(サッカーやろうぜ!)






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