12.







歓声の中、フィールドに立つ君達を見て、私は涙が止まらなかったんだ。


サッカー日誌




準決勝の試合は、レベル的にはどちらかと言えば低かった。ボールとスイカを入れ替えたり、土煙を立ててゴールをずらしたり。中でも「ド根性バット」は衝撃的だった。数回発動されたあの技は、バット側の選手にかなりのダメージがあったことだろう。私まで痛い顔になったのは言うまでもない。


とにかく、突っ込み所満載の準決勝だったが、私が「道」を決めるには充分な試合だった。




「円堂。」




試合終了後、雷門中に戻るためにバスに乗り込もうとしていた円堂を呼び止める。私に気付いた円堂は、いつもの笑顔でこちらに歩み寄ってきた。



「朝倉、見てくれてありがとな!俺達勝てたぜ!!」




私に向かって拳を突き出した円堂に、頬が緩むのが分かった。バスの入り口で、木野さんが嬉しそうに手を振った。




「最初は豪炎寺がいないからダメだと思ってたんだけどな、みんなで偵察に──。」




円堂は興奮を抑えられない様子で、ここまでの経緯を話してくれる。偵察に行った喫茶店はメイドがいたとか、相手を見たらみんなの戦意がなくなったとか。




「すんげーいっぱい、いろんなことがあったんだ!!」






──泉!





あぁ、私は何を勘違いしていたんだろう。目の前に立って嬉しそうに私に話し掛ける彼は、「彼」とは違うのに。私を呼ぶ声も、キラキラとした笑顔も。「彼」と円堂は、違うのに。



涙はとっくに乾いた。後は私が前に進むだけ。





──ごめん凉。私、サッカーが好きだ。





受け入れてもらえるかは分からない。それでも、もう嘘はつけないから。





「円堂、君に私の話を聞いてほしい。」













目を開いて真っ直ぐに

(私が選んだのは、未来への希望の道)







「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -