「あれ?…朝倉!」
見つかってしまった。
サッカー日誌
「本当に来てくれたんだな!」
嬉しそうに私の横で飛び跳ねる円堂を見て、思わず顔を引き吊らせた。
これから行われるのはフットボールフロンティア地区大会準決勝。
来るつもりはなかった。適当な理由をつけて後日謝ればいい。見たところで私には何のメリットもないんだ。サッカーは必要ない。もう二度とサッカーと関わったりしない。
そう、思っていた筈なのに。気付いたら私はここに向かっていて、見たくない、行きたくないというのに、体は止まらなかった。
「俺達絶対勝つからさ、応援しててくれな!」
逃げたい。この太陽のような輝きが届かない程遠くに逃げてしまいたい。
──泉!!
なのにそれが出来ないのは、あの日の彼が、鎖のようになって私を繋ぎ留めるから。
ごめんなさいなんて、意味のない言葉は言わない。だってきっと、彼は今の私を見たら、泣きそうな顔をして怒るから。
「いい試合にするからな!サッカー、すっげー面白いからな!!」
知ってるよ、君達がつまらない試合なんかしないって。サッカーはとても面白いスポーツなんだって。
分かってるよ、私がしていることは無意味だって。彼への償いにはならないんだって。
私は、サッカーが好きなんだって。
「絶対絶対、最後まで見ててくれよ!!」
いつだって、神様は意地悪だ。
どんなに辛くても、苦しくても、逃げ道なんかくれないんだから。
許されたのは進むことだけ
(彼と絶望の過去を歩むのか)
(君と希望の未来を歩むのか)