どんなに拒絶しても、貴方が彼らを見る目はとても愛しそうで。
サッカー日誌
勢いのままに朝倉さんをサッカー部に連れてきてしまったけれど、だから何をすると言うわけでもなくて。ただなんとなく円堂くん達のサッカーを見てもらいたくて、どうしてかなんて考える前に体は動いていた。
朝倉さんは抵抗はしなかったし、今はベンチで私の隣に座ってみんなの練習を見ている。時々少しだけ顔を歪めるけど、目を逸らすことはしなかった。
「見に来てくれてありがとうな!」
休憩中、ドリンクとタオルを持った円堂くんは嬉しそうな顔でそう言った。先日、朝倉さんを無理に勧誘はしないと言った円堂くんはそれ以上彼女に話し掛けることはなかったけれど、やっぱり気になるようで、チラチラと様子を窺っている。あまりにあからさまな彼に、朝倉さんもなんとなく気付いているようで、呆れながらもふわりと微笑んでいた。
(あ…、)
朝倉さんがサッカーを避けようとしていることは知っていたし、嫌いなら無理強いはしたくないと思っていた。
だけど、
「良いぞマックス!」
円堂くんを見る目が、
「良いパスだ半田!!」
楽しそうにサッカーをするみんなを、止まることなくグランドを転がるボールを見るその目が、とても優しくて綺麗で、本当にサッカーが嫌いな人がするような顔なのかと思ってしまって。
母が子を見守るような、愛しいものを包み込むような眼差しが、「この人はサッカーが好きなのだ」と、そう言っていた。
練習が終わって帰ろうとしていた朝倉さんを呼び止めて、今度の準決勝を見に来てくれないかと聞くと、「考えておくよ。」とだけ言って帰っていった。
「来るといいな、アイツ。」
松葉杖を持った豪炎寺くんが隣でそう呟いた。
女神のような
(彼らを見る貴方は、)
(そう、まるで女神)