「ごめんね、手伝ってもらっちゃって。」
サッカー日誌
ウチの担任は何かと生徒を雑用に使うようで、今回それの餌食となった木野さんを手伝っていた。
申し訳なさそうに笑う木野さんに大丈夫だと告げて、憎き担任が授業で使用した資料を運ぶ。
あぁ重いマジ重い。コレを1人のしかも女子に任せるとか頭可笑しいだろ先生。
「本当にありがとう!助かっちゃった!!」
資料を片付け終わると、木野さんはそれはもう素敵としか言いようのない笑顔でお礼を言った。
私が男だったらきっと今ので落ちてるよ。
「大したことじゃないよ、それじゃまた明日ね木野さん。」
ヒラヒラと手を振って帰ろうとした私の振っていない方の腕を、グイッと引っ張る誰かの手。
………デジャヴ?
「朝倉さんて、サッカー上手いんだよね!!」
「…いや、あの」
「ちょっと見学してかない?」
「あのー……、」
「みんな歓迎してくれるわ。大丈夫よ!!」
何が大丈夫なんだい木野さん。君の細い身体のどこにそんな力があるんだ。
嬉しそうにグイグイと私の腕を引く木野さんに、何も言えないままサッカー部まで来てしまった。
「いいシュートだ染岡!!」
グランドでは、あの日以来全く関わらなくなった円堂が楽しそうにサッカーをしていた。
──もし、あの事故がなかったら。
私はあの笑顔と、サッカーすることが出来たのか。一緒にボールを追いかけられたのか。
「サッカーしてる時の円堂くんって楽しそうでしょ?」
そう言った木野さんに、頷くことしか出来なかった。
それでも私は意志に背く
(だってそれが、)
(私が「彼」に出来る唯一の償いだから)