「重っ!!」
サッカー日誌
プルプルと震える私の腕には2クラス分のノートが抱えられていて、歩く度に揺れるソレは今にも落ちそうだ。
「……クソッ…。」
腕が痛い。先生は鬼畜なのかそうだったのか。
運悪く生活係(別名、先生のパシリ係)になってしまった私は、度々先生に呼ばれては手伝い(パシリ)をさせられていた。
「あと、少し…。」
もう少しで職員室に……着かねーよオイ。なんで雷門はこんなに廊下長ェんだよ。嫌いなの?建築した人は私が嫌いなの?
そんなことを考えていたら、急に床がツルッとして足を滑らせてしまった。
ドサドサッ
……最悪だ。
誰もいない廊下に散らばったノートを見て溜め息を吐く。とりあえず拾わないとどうしようもないので、立ち上がってポンポンとスカートの埃をはらってからノートを拾うことにした。…時だった。
「大丈夫か?」
聞こえた声に振り返れば、逆立った白い髪が特徴の彼がいた。名は確か…豪炎寺、だったろうか。
私がここに来る少し前に転校してきたらしい彼もまた、円堂からの猛勧誘を受けていた。(なんでも、帝国戦で勝てたのは彼のおかげだとか。)(円堂に聞いた。)
豪炎寺は私の傍までやってくると、テキパキとノートを拾い始めた。
「これで全部か?」
「あぁ!ありがとう、手伝ってくれて。」
あっという間に拾い終えたノートを見て豪炎寺にお礼を言った。それから再び職員室に向かおうと山積みのノートを持ち上げたのだが、
「手伝う。」
そう言って私から半分以上のノートを取っていったのは豪炎寺で、彼は驚く私をよそにどんどん廊下を進んでいく。
「あ、ちょっ……待てって!!」
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「ホントに、何から何まですいません…。」
「今度からは分けて運ぶか誰かに手伝ってもらえ。」
「…おっしゃる通りでございます。」
やっと大量のノートから解放された私は、職員室の前でヘコヘコと頭を下げていた。
豪炎寺が元々無表情なせいか、怒っているのかそうじゃないのかよく分からなくて、とりあえず怒ってたら嫌だなぁ…なんて考えながら彼の言葉に頷いていた。
「…そ、それじゃ……また明日。」
とにかく少しでも早くこの場から離れたくて、ぎこちなく手を振りながら豪炎寺に別れを告げた。がしかし、パシッと振っていない方の腕が掴まれ前に進むことが出来ない。
「…あの、豪炎寺さん?」
やっぱり怒っていたのか!?そうだったのか!?
ダラダラと冷や汗が流れ、気まずい空気が辺りを包む。
「サッカー部に、入らないか?」
シンとした廊下に、豪炎寺の低い声が響いた。
お前もグルか
(だけどそれでも、)
(すぐに嫌だと言えない自分がいた。)