無茶はしないでね。怪我もしないでね。土方さんを困らせては駄目だよ。

いつも必ず、帰ってきてね。


総ちゃんがお仕事に行くときの、私との約束ごと。大抵は守られずに、ヘラヘラしながら「悪かった。」と言う総ちゃんに上手く丸め込まれて終わってしまうのだけれど、たった一つだけ、総ちゃんが必ず守ってくれる約束があった。





「総ちゃんお仕事?」

「おう、おめぇ今日は外出ねぇで大人しくしてなせぇ。」

「攘夷浪士?」

「しかも過激派の奴らってぇんだ。仕方ねえから仕事してくらぁ。」





面倒くさそうに言って大あくびをした総ちゃんに思わず笑みがこぼれる。まったく、これから命がけの仕事へ行くというのに呑気なものだ。総ちゃんも、私も。

ゆっくりとこちらにのばされた手が軽く私の頭に乗って、目の前の総ちゃんが優しく微笑む。あったかくて、まぶしくて。ああ、私たち生きてる。





「ね、総ちゃん。ちゃんと帰ってきてね。」





刀を持って戦場に出て行く背中は何度見たって慣れなくて、だけどいつだって総ちゃんがこの約束だけは守ってくれるから、不安にはならなかった。





「待ってろぃ。さっさと片付けてさっさと帰って来まさぁ。」





だいじょうぶ、だいじょうぶ。きっと君はまた無茶をして、怪我をして、土方さんを困らせるのだろうけれど。

小指と小指でしっかり結んだこの約束だけは、きっと。










指切りげんまん

四月一日。冷たくなって動かなくなった総ちゃんは、この日初めて私に嘘をついたのだ。










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