よん






最近、気付いたことがある。

志々尾くんは毎晩一定の時間になると家を出て行って、かなり遅い時間になって帰ってくるのだ。一度、気になって少し開けたドアの隙間から見えた彼の格好は、なんというか、忍者のようだった。

個人の趣味に口出しをするつもりは毛頭ないけれど、あの無口で強面な志々尾くんにコスプレの趣味があったんだと知った時はもうどうしたらいいか分からなかった。





「人は見た目によらないってことねー。」





バイト帰りの暗い夜道。ちょっと寂しくてそんなことを言ってみたけど虚しいだけだった。つーか志々尾くんに聞かれたらまた嫌われるじゃないの。

だいたい、店長が悪いんだ。か弱い女の子を夜中まで働かせるだなんて。おかげで明日提出の課題を教室に忘れたのを思い出しちゃったじゃないか。





「夜の学校とか、こわーい!」





きゃー。校門前で止まってぶりっ子をしてみるも、誰かが来てくれるわけもなく。





「仕方ない、帰ろう。」





いや、だって怖いもん。怖いんだもん。お化けとか非科学的なものは信じないですけど?私これでも女の子ですし?「結!」いや、ケツじゃないよ失礼だな、って、





「……え、時音?」





聞き間違えるわけがない。今ケツだなんてお下品なことを言ったのは、あの声は、愛しのマイエンジェル時音だ。

え?時音、なにしてるの。真夜中の学校でケツとか、なにしてるの。





「滅!」





どかーん。大きな音がして、木が倒れて煙がもくもくして、時音が危ないんじゃないかと思った時にはもう、体が動いていた。

走って走って、一秒でも早く、時音がいるところへ。

怪我してないかな。泣いてないかな。今行くからね、待っててね。

見えた黒髪の長いポニーテールに安堵して、無事を確かめるべくその背中に向かって叫んだ。





「時音!だいじょうぶええええええええええ!?」















何してるんですか!


(名前!?あんたなんでここに…、)

(と、ととと時音がコスプレしてるうううう!!)

(ちょっと!なんで泣くのよ!!)







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