ご いつも通り妖退治をしていた俺たちの前に突如現れたのは、制服姿の名前さんだった。 バイト帰りに宿題を忘れたのを思い出し、取りに来ただけだったらしい。 仕事を見られたからか、名前さんが夜中に1人で歩いていたからか(ここだけの話、時音は結構名前さんに甘い)、ものすごく怒っている時音と志々尾。2人に睨まれて縮こまっている名前さんは本当に、なんていうか、うん。 「ホントあんた馬鹿じゃないの!?」 「すみませ、」 「信じらんない!」 「ごめんなさ、」 反論どころか、誤る隙もない名前さんがいい加減可哀想になってきたから、俺も怒鳴られる覚悟で話に割り込む。「あの、」「あんたは黙ってな!」すいません無理です。 「とにかく、夜の学校は危ないんだ。さっさと帰んな。」 厳しくそう言った時音にしょんぼりとして、名前さんは校門の方へ歩いていく。 「時音…いいのかよ?」 「名前は一般人よ。巻き込めないでしょ。」 俺達が結界師としてここにいる以上、一般人を巻き込まないのは当たり前のこと。 正当継承者になって、この仕事を始めて、何度も何度も同じことを言われ続けてきたから、馬鹿の俺にだって分かること。 分かる、分かってる。だけどやっぱり、この力を、俺達のしていることを理解してくれる人がいたらなんて。夜行とか、家族とかじゃなくて。名前さんみたいな人が。 「名前は適当に誤魔化しておくから。」 あたし達は仕事するよ。そう言って笑った時音の顔は、泣きそうだった。 運命に縛られて 時音を慰めようと伸ばした手は、遠くから聞こえた悲鳴によって止められた。 |