暗い暗い牢屋の中、私と土方さんはただぼーっと天井を見上げていた。
侍ガール!一体何故、大晦日にこんな目に合わなければならないのだろうか。せめて隣にいるのがニコチンが足りなくて苛々しているマヨラー鬼の副長じゃなくて、地味だけど優しいザキさんとかだったらいいのに。
「年明けちゃいますね。」
今年こそは沖田隊長に邪魔されることなくジャ○ーズのカウントダウン見ようと思ったのに。きっと今頃女中さん達が温かい年越し蕎麦を用意してくれてるんだろうな。あぁ全く、それもこれもみんなあのバカイザーのせいだ。イボってなんですか。2年後?寝ぼけてるんですかそうですか。とりあえず土方さんは元に戻せたけれど、私達2人で今や100を越える真選組を相手にするのは無理だ。やっと見つけたまともな新八くんも銀さんを助けると言ってどこかに行ってしまった。
「つーか、なんで俺の頭にこんなたんこぶ出来てんだよ。」
「イボ治しのために私が編み出した唯一の治療法です。」
「え?もっと優しく出来なかったの?」
「大好きな土方さんのためだけに私が編み出した唯一の治療法です。」
そ、そうか。少し顔を赤らめてそっぽを向いた土方さん。
「ところで、なんでお前は捕まってんだ?」
「土方さんで成功したんであのバカイザーにも効果あると思ってやろうとしたら失敗しました。」
「俺実験台じゃねぇかァァァァアア!!」
ハリセンを持ってバカイザーのいる部屋に押し掛けると、待機していたらしい隊士数人が飛びかかってきた。一応副隊長をしている身だけれど、所詮は女。成人男性数人を相手にできるわけがない。あっけなく捕まった私に自ら縄をかけるバカイザーはとても楽しそうに笑っていた。「女が縛られた姿は格別良い。」「イボになってまでドS発揮しないでくださいバカイザー。」喋り方も態度も違うくせにドSだけは治らないとかどんだけ筋金入りなんだあの人のドSは。
「腹減ったな…。」
ポツリと隣で土方さんが呟いたその時。
『食わせてやろうか?』
ブーンと音を立てて、目の前にあった(というか今気付いた)モニターに人が映った。バカイザーだ。
「総悟!テメッ……こんなことしてただで済むと思うなよ!!」
『無様だな土方。お前はそこで飢えて死ね。』
「お前イボとか嘘だろ!!総悟だろ!!」
きゅるるる。お腹が鳴った。ああ笑ってる。バカイザーが嬉しそうな顔してる。
『みょうじなまえ。味方につくなら我が真選組幹部に迎え入れ、飯を与えてやろう。』
土方さんが不安そうにこちらを見つめてくる。「大丈夫ですよ。」侍たる者、いついかなる時も冷静にその場に最も最適な判断をする。「私は、」
「味方になります。」
年明け一時間半前(おいィィイイ!!)
(いや、だって年越し蕎麦食べたいし。)
※やってはみたけどイボはよく分からん。