「………寒っ!!」
サッカー日誌時計を見ればもうじき年が明けそうで、それだというのにあの馬鹿共はこんな真冬のこんな真夜中にまでサッカーをしていて。既に溜め息をつくのも嫌になっていた。
「ありえない。大晦日にまでサッカーとか……サッカーで年越しとか……、」
「え、円堂くんってサッカー馬鹿だから…。」
「サッカー馬鹿というか、ただの馬鹿?」
「……。」
困ったような顔をした秋が一生懸命にフォローしたのだが、今の私には全く効果がない。だって眠いんだ、仕方ないだろう。昼間は家の大掃除と雷雷軒の手伝いでバタバタし、やっと片付いたのでゆっくりしようかと思ったら、めちゃくちゃ良い笑顔の我らがキャプテンが玄関前に立っていたのだ。サッカーやろうぜなノリで「一緒に年越ししようぜ!」と言ったマイキャプテンは私の返答をオールスルーして鬼道家に拉致した。
「寝ていいかな、いいよね?だって眠いんだから仕方ないよね?ね?」
「…円堂、みょうじ寝かせてやってくれ。」
色気より食い気、食い気より眠気。カウントダウン?そんなの知ったこっちゃないんだよ。どうせ明日になったらなったで初日の出だ初詣だ福袋だサッカーだで引っ張り回されるんだから。少しくらい休む時間をくれたっていいだろう。
「えー…もう寝るのかよ。」
ムスッと拗ねる子供みたいなキャプテン。寒さですっかり紅くなった頬を膨らませるその姿は、とても同い年には見えなくて。「円堂くん、みんなも疲れてるだろうし…。」「……サッカーで年越しする。」完全に駄々っ子モードになった彼は秋の言葉にもぷいっと顔を背けてしまう。あぁ、ほらお前はいつもそうやっていじけた目で私を見るんだ。
「…………。」
「………みょうじ、」
小さく元気のない声で呼ばれてしまったら、もう何も出来なくなってしまうじゃないか。せっかくの鬼道家の豪邸で、せっかくのふかふかなベッドが用意された場所で、きっと中は温かいだろうなんて思いながらもボールを持ってしまう私も相当馬鹿だ。
「んじゃ、紅白戦でもしますか。」
ただそう言うだけで、君があまりにも嬉しそうに笑うから、
「サンキュー、みょうじ!!」
本当、適わないなぁ。「円堂くんには甘いのね。」夏未が隣で呆れたように笑った。こんなに寒いのに、眠いのに、面倒臭いのに。たった一回名前を呼ばれただけで折れてしまう。
「年越しサッカーだぁぁぁ!!」
時計の針はとうに新年を迎えていた。サッカー馬鹿は相変わらず元気で、さっきまで欠伸をしたり毛布にくるまっていたメンバー達もウォーミングアップを始めている。
日本一になった。宇宙人を倒した。世界の頂点に立った。たくさんのすごいことが一気に起きて忙しかったこの一年。いつも中心にいたのはあの太陽みたいな笑顔だった。
「みょうじ!サッカーやろうぜ!!」
新年の挨拶どころか、当初の目的であるサッカー部みんなでカウントダウンの存在すら忘れているあの馬鹿は、今年もきっと色んな事件に巻き込んでくれるんだろう。
Happy New Year!!2012年、今年もみんなが笑顔でサッカーできますように。
※企画一位はサッカー日誌でした!!
※皆様にとって幸せな一年になりますように。