侍ガール! | ナノ


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「コイツは松岡咲夜ってェんだ。」

「……どーも。」


ポコリと飛び出たたんこぶを冷やしながら、彼─松岡くんはそう言った。





侍ガール!





ブスッとした顔の松岡くんは私と視線を合わせようとしない。
よほど嫌われてるのね。




「沖田、…総悟。」

「……え?」





不意に松岡くんの口から、聞き慣れた名前が。





「あの、ウチの隊長(馬鹿)が何かしました?」

「お前失礼って言葉知らないアルか。もう少し包んで言ってやれヨ。」





神楽ちゃんのツッコミはスルーの方向で。

松岡くんの返答をじっと待っていると、彼は口を開いた。





「…アイツは、俺の…俺の大切な又三郎をっ……、」





殺したんだ。





「……。」





残酷な事実と上司の失態に、言葉が出なかった。なんて事をしてしまったんだ。

時としてこの仕事は、人を殺め、憎しみという感情を生むことがある。





「……ごめん、なさい……。」





彼に向かって深く頭を下げた。

許される事ではない。けれどそうせずにいられなかった。
何とも言えない気持ちが胸中で渦を巻く。





「四季は謝らなくていいアルよ。」

「…でもっ!!」

「コイツの言ってる又三郎はカブトムシのことヨロシ。」








「…………は?」





カブトムシってあのカブトムシですよね?
ゴキ様に角生えましたみたいな、子供に人気の一般的昆虫。





「え?カブトムシ?ねぇカブトムシ?」

「ちくしょォォォ!!沖田の野郎!大体、普通のカブトムシがあんなデケェ化け物に勝てるかよ!」





……あぁ、ですよね。万事屋の人だもんね。






私の謝罪を返せ


(真選組なんか大嫌いだァァァァ!!)

(いいんですか咲夜くん。このケーキ、四季さんが持ってきてくれたんですよ?)

(お前いい奴だな!!)

(……現金な奴だなオイ。)









※ってな訳で、松岡咲夜(マツオカサクヤ)くんです。
※彼は天人で、本来の姿は猫ちゃんな猫又族
※とりあえず馬鹿です。ただの馬鹿です。