▼bU
「コイツは松岡咲夜ってェんだ。」
「……どーも。」
ポコリと飛び出たたんこぶを冷やしながら、彼─松岡くんはそう言った。
侍ガール!
ブスッとした顔の松岡くんは私と視線を合わせようとしない。
よほど嫌われてるのね。
「沖田、…総悟。」
「……え?」
不意に松岡くんの口から、聞き慣れた名前が。
「あの、ウチの隊長(馬鹿)が何かしました?」
「お前失礼って言葉知らないアルか。もう少し包んで言ってやれヨ。」
神楽ちゃんのツッコミはスルーの方向で。
松岡くんの返答をじっと待っていると、彼は口を開いた。
「…アイツは、俺の…俺の大切な又三郎をっ……、」
殺したんだ。
「……。」
残酷な事実と上司の失態に、言葉が出なかった。なんて事をしてしまったんだ。
時としてこの仕事は、人を殺め、憎しみという感情を生むことがある。
「……ごめん、なさい……。」
彼に向かって深く頭を下げた。
許される事ではない。けれどそうせずにいられなかった。
何とも言えない気持ちが胸中で渦を巻く。
「四季は謝らなくていいアルよ。」
「…でもっ!!」
「コイツの言ってる又三郎はカブトムシのことヨロシ。」
「…………は?」
カブトムシってあのカブトムシですよね?
ゴキ様に角生えましたみたいな、子供に人気の一般的昆虫。
「え?カブトムシ?ねぇカブトムシ?」
「ちくしょォォォ!!沖田の野郎!大体、普通のカブトムシがあんなデケェ化け物に勝てるかよ!」
……あぁ、ですよね。万事屋の人だもんね。
私の謝罪を返せ
(真選組なんか大嫌いだァァァァ!!)
(いいんですか咲夜くん。このケーキ、四季さんが持ってきてくれたんですよ?)
(お前いい奴だな!!)
(……現金な奴だなオイ。)
※ってな訳で、松岡咲夜(マツオカサクヤ)くんです。
※彼は天人で、本来の姿は猫ちゃんな猫又族
※とりあえず馬鹿です。ただの馬鹿です。
←