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煌びやかな町の中を俺は一人、歩いていた。
侍ガール!
俺は咲夜。万事屋兼情報屋の松岡咲夜だ。今日は情報屋の方で仕事があって吉原に来ている。え?仕事の内容?フッ……それは企業秘密さ。
「ちょいとそこのお兄さん、ウチで遊んでいかないかい?」
店の中から綺麗な着物を纏った女が俺に話しかけてきた。悪いな姉ちゃん、俺ァあんたが目当てで来てるんじゃねえ。他を当たってくれ。そう言って片手を挙げて女と別れた。
しばらくして目の前に現れたのは「紅天夢想」と看板にかかれた一軒の遊郭。此処こそが今回の俺の仕事場だ。外で呼び込みをしていた男がこちらに寄ってきた。
「旦那ァ、ちょいと遊んでいきやせんか?」
そう言った男にニヤリと口角を上げると、ゆっくりと店の中に入っていく。そこら中に香水のような甘ったるい香りと微かなマタタビの匂いが広がっていて酔いそうになってしまう。ロビーらしき部屋に通された俺は、男と向き合うような形でフカフカのソファに座った。
「で、旦那。どの娘がいいですかい?」
あぁ、やっと見つけた。後ちょっとだ。もう少しでお前に会うことが出来る。
「この店で一番の遊女を出してほしいんだ。」
少し驚いたような顔をした男は片手を額に当てると「こりゃあたまげた」と言って大きな声で笑いだした。
「旦那ァ、あいつァこの店で一番高いんですぜ?金はあんのかい?」
「当たり前だろ、店に手ぶらで来る馬鹿いねぇよ。」
ゴソゴソと懐から出した銀さんからのお下がりの黒い長財布。ニヤニヤと笑う男の目の前にありったけの金を突き出した。
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「なんだよケチ!なんでダメなんだよ馬鹿ヤロー!!」
「うるせぇ坊主!!遊郭に500円しか持って来ねぇ馬鹿がいるかァ!!」
チッ……ちょっと予想はしてたけど、500円は流石にまずかったか。つっても俺、昨日着物買っちゃったから全財産が500円しかないんだよな。やっべーやっぱりあの着物すっげーデザイン良かった明日着ようかな、そんで四季に見せに行こうかな。あ、でも沖田がいたら嫌だわ。
まぁそんなこんなで今回の任務、失敗。
ふざけた始まり
(本当は着物なんかどうでもいい)
(君の居場所が分かっただけで安心した)
※オリジナル吉原編
※咲夜くんが中心です。もちろんヒロイン出てきます。
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