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隊長と話さなくなってから1ヶ月が経ったある日。それは突然起きた。
侍ガール!
「え、……あれ?」
無い。タンスにお風呂に洗濯機。屯所内は全て探したのにソレは見つからない。自室はもちろん、庭や台所も隈無く探したのだけれど、ソレが見つかることはなかった。
「なんだ?探し物か?」
振り返ると書類を手にした土方さんが立っていた。普段私があまりなくし物をしないからか、少し驚いた顔をしている。
「あ…………ちょっと、」
「何を探してんだ?手伝う。」
ズイッと顔を近付けてきた土方さんに、私は思わず後退る。いくら頼りになる土方さんでも、今回ばかりは言うわけにはいかない。これは私のプライド云々がかかっているんだ。
けれど土方さんは一向に諦める様子がなく、ジッと私を見ている。
「四季。」
いつもよりいくらか低い声に、肩がビクリと跳ねた。土方さんは私が隠し事をしているから、だから怒っているんだ。普段厳しいけれど、本当はとても心配性な人だから。
言おうか否か迷っていると、土方さんの表情は次第に悲しそうなものへと変わっていく。
狡い人だ。そういう顔をされると私が嫌だと言えなくなるのを知っているくせに。
「な、い…んです。」
「何が。」
「し、…………………………下着が。」
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「犯人は見つかり次第跡形もなく切り刻め!!」
「「オォォォォ!!」」
気付いた時には既に事は大きくなっていて、真選組総出で下着泥棒の捜査に当たっていた。
「四季ちゃん!安心しろよ、俺が犯人捕まえるからな!!」
「俺達真選組の紅一点の下着を盗むなんざ、とんでもねー野郎だ。」
ブンブンと素敵な笑顔で手を振ってくれる隊士の皆さんに、引き吊った笑顔で手を振り返す。ってか下着って言うなァァァァァ!!プライドも何もズタボロなんですけどォォォォォォ!?
そうこうしている内に日が暮れて、空には大きな月と沢山の星が輝き始めた。
庭にある物干し竿には犯人をおびき寄せるための、ホラ……あの、下着の上の方。あれだ、穿くんじゃなくて付ける方。が風にゆらりとなびいていた。ちなみにアレは私のです。
「…………土方さん、」
「あ?」
「なんかもう、…………やめません?」
みんなは本気で私を思ってやってくれているんだろうけど、これはもう私に対する辱めとしか思えないんだ。だって犯人捕まっても結局私は恥ずかしい人じゃん!そうじゃん!
必死になって土方を説得していたその時だった。その場に聞き覚えのない笑い声が響いた。
「パンツのゴムに導かれ、今日も駆けよう漢・浪漫道!!」
「テメー!褌仮面か!!」
「前回のお妙さんじゃ飽きたらず、四季ちゃんにまで!!」
現れたのはいつぞやの褌仮面だった。相変わらず寒そうな格好をしてらっしゃる。あの格好でここまで来たんだねあの人。すごいね。なんかもう犯人があの人ならどうでもいいや。
「東城院四季!貴様の母親の下着もなかなか好評だったぞ!!」
前言撤回。
(人の母上に何してくれてんだコノヤロォォォォォォ!!)
(トシィィィ!!四季ちゃんが怒ってるよ!!)
(すまねぇ近藤さん、俺には止められねぇ………。)
※私は1ヶ月も喧嘩なんて耐えられません(笑)
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