▼25
すっかり体調の良くなった俺は、翌日からいつも通りの生活に戻ったが、何故か四季に避けられていた。
侍ガール!
「総悟テメーまたサボってんのか。」
いつも通りに仕事をサボって縁側で昼寝をしていると、土方コノヤローが呆れたように溜め息を吐いて、珍しく俺の隣に腰を下ろした。
正直今は仕事どころじゃない(とは言え、普段から仕事はしていないが)。四季に避けられるようになって早一週間。理由が分からないままグダグダしていたら、余計と気まずくなってきた今日この頃。
「あーあ、マジ死ねよ土方。」
「オイ、テメー叩っ斬るぞコラ。」
何が楽しくてマヨラーなんかを隣に昼寝してるんだ俺は。マジで消えてくんねーかな土方。そしたら俺は晴れて副長の座に就けるし、そうなったら四季は一番隊隊長で俺の側近……って今避けられてんじゃねーかよ。オイ、マジでふざけんなよ土方。
「土方さん。」
不意に背後から聞こえた声に閉じていた目を開けば、四季が報告書らしき紙を数枚持って立っていた。
「報告書に印をお願いします。」
それだけ言うと、四季はくるりと背を向けて来た道を歩き始めた。
──なんで、
なんで俺には何も言ってくれないんだ。いつもみたいに仕事しろって叱れよ。呆れたように笑って、俺の隣に座れよ。
俺を、見てくれよ。
気付いた時には、手の中に四季の細い腕があって、目の前には眉間に皺を寄せて俺を睨む四季がいた。
「隊長を避けるたァ、いい度胸だねィ。」
土方コノヤローには普通に話し掛けるくせに、俺には見向きもしてくれない。四季が俺を避けるくらいだから、原因はきっと俺にあるんだろうが、それでもやっぱりヤローに負けたみたいで、悔しかった。
「何を怒ってんだか知らねーけどな、流石にコレは酷ェんじゃねーかィ?」
ピクリと動いた四季の肩。逃げはしないが、俯いて黙っている四季にイライラしてしまう。四季の腕を掴む手に、ギリギリと力が込められていく。早く、早く返事をくれよ。
「……酷…いって、」
「…あ?」
「……酷いのは、隊…長の方じゃ、ないですか、」
そう言って顔を上げた四季は、今にも零れそうな程に目に涙を溜めて、血が出てしまうんじゃないかというくらい強く唇を噛み締めていた。
「だって…隊長は、わた…し、私が、ミツバさんに似てるから、だから優しくするんでしょう?」
一瞬、時間が止まったように感じた。
「隊長は私とミツバさんを重ね合わせてるんでしょう!?」
その言葉に、違うと言えなくて、泣きながら走って行く四季を止めることが出来なかった。
やっと気持ちに気付けたのに。
あぁ、俺はなんて馬鹿なんだろうか。
無くして気付いて
(追うことも出来ないちっぽけな俺)
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