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「初めまして、沖田ミツバと言います。」
ふわりと微笑んだその人は、とても綺麗な方だった。
侍ガール!
沖田隊長の部下なのだから挨拶くらいはと近藤さんに呼ばれて客間に行けば、そこには綺麗な女性がいた。
──ミツバさんだ。
「初めまして。一番隊副隊長をさせて頂いております、東城院四季です。」
深く頭を下げて挨拶をした私に、ミツバさんは「そんなに堅くならなくていい」と言って下さった。
「貴方のこと、そーちゃんから色々聞いてるわ。いつもあの子を助けてくれてありがとう。」
彼女はとても優しくておしとやかで女性の鏡のような方で、この人と私が似ているなんて到底思えない。
だってミツバさんは、全てが私と真逆で住む世界が違うのだから。
男みたいな短髪に身体の至る所にある傷痕に常に腰に帯びられた刀。
どこをどう見たらミツバさんと私が似ているように見えるのか。
私には全く分からない。寧ろミツバさんに失礼だろう。
「四季ちゃんは辛いものが好きって聞いたんだけど…。」
「え、あ…はい!大好きですよ。」
ぼーっとしていたらいつの間にか話が食べ物の話になっていたようで、慌ててそう答えた。
ミツバさんは嬉しそうな顔をして、ご自分の旅行鞄から激辛煎餅を一袋取り出した。
「これ、貴方にお土産。いつも送ってるものより辛めのやつなのよ。」
「美味しそうですね!ありがとうございます、頂きます。」
「もっと楽にしてくれて良いのよ?私の方がオバサンかもしれないけど。」
貴方に会うの、楽しみにしていたんだから!そう言ってミツバさんはクスクスと笑った。
それからしばらく2人でお話をしていると、廊下をバタバタと走る音が聞こえてくる。
「姉上!」
スパーンと大きな音を立てて開いた障子から現れたのは沖田隊長で、それはそれは嬉しそうにキラキラとした目でミツバさんを見ていた(うん、誰だろうこの人)。
「四季も居たんですかィ?」
「あ…すみません。じゃあ私はこれで、」
失礼します。と言って部屋を出ようとした私の腕を、沖田隊長はガシリと掴んだ。…掴んだ?
「あの…隊長、」
「せっかくだから四季も一緒にいて下せェ。ねぇ、姉上。」
「そうね。お仕事の邪魔にならないのなら、もう少しお話しましょ?」
2人は笑っていた。それはもう素敵な笑顔で。
だんだん私の腕を掴む隊長の力が強くなってチラチラと数センチ抜かれた刀を見せられた私は、大人しく頷くしかなかった。
弟が弟なら、姉は姉だ
(四季にはいつも仕事を助けてもらっているんです。)
(あれ?この人仕事したことあった?)
※沖田さんがアレなのはミツバさんがアレだからだと思います。
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