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「四季。」
侍ガール!
攘夷志士達を捕まえ一件落着となった現場だったが、沖田隊長の私を呼ぶ低い声に、それまで騒いでいた隊士はもちろん、口喧嘩をしていた土方さんと銀さんまでもが固まった。
「はい、」
「空中散歩は楽しかったですかィ?」
ニコリ。
口だけで笑う彼の目は冷ややかで、とても恐ろしかった。
一歩ずつゆっくりと私の方に近付いてくる沖田隊長に、ドクドクと心臓が嫌な音を立てる。
──隊長、怒ってる。
「あの…たいちょ、」
「上で何があったかは知らねーが、随分と勝手ですねィ。」
俺達ァ下で必死に達戦ってたってェのに。クツクツと笑う隊長は本当に怖くて、全身の血が退いていくのが分かった。
「…総悟、」
「土方さんは黙っててくだせェ。」
そう言って一気に近付いた隊長は、私を近くの建物の壁に追い詰めると、私の顔の真横に手をついた。
「あんたがそんな自己中な人間だとは思いやせんでした。」
ギロリと睨まれ、肩が跳ね上がった。けれど、何故だか隊長の目が悲しそうで、思わず目を見開く。
どうして?なんで隊長が悲しそうな顔するの?
「た、いちょっ…!」
目の前が真っ黒になった。身体中に優しい温もりを感じて、背中をキツく締める腕に、隊長に抱き締められているんだと分かった。
「勝手なことしてんじゃねーバカ。」
悪態をつきながらも小刻みに震える隊長の肩に、捕まった時の焦りや飛び降りた時の恐怖が押し寄せてきて、視界がぼやけ始める。
「無事で、良かった…。」
ポロポロと零れだした涙は、止まることを知らなくて隊長の肩を濡らしていく。
怖くて怖くてたまらなかった。みんなが傷付くことも、自分から命を絶とうとしたことも。
だけど、本当に怖がったのは、こうして大好きな人達といられなくなることで、死んだら二度とこの温もりを感じることも、笑顔を見れることもなくなるんだと思ったら、今頃になって怖くなった。
「ごめ、なさっ…、ごめん、な、さっ…い。」
ガタガタと震えながら必死に謝る私を、隊長は力強く抱き締めてくれた。
大切な人
(それは、どんなに高い宝石よりも、)
(美しくて価値のある。)
※前回活躍出来なかった沖田さんのためのリベンジ編(笑)
※最初は土方さんに抱き締めてもらう予定だったんだけどねー
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