外に出たいならジジイに言えば良かったんだ。だけどそれができなかったのは私がそんなことを言えた立場でないからで。だってどんなに頑張ってもどんなにいい子にしても、私は猿飛一族にはなれないのだ。
「ハツヒ、」
あんなことがあった翌日だというのに、シカクさんも女中さん達もみんな優しかった。きっと私がジジイに叱られたんだと思って気を遣ってくれているんだろう。窓ガラスのことを謝りに行った時も何故だかお茶とお菓子を出され、脱走について触れてくることはなかった。
「今日は遊ばないのか?」
机に向かってただ黙々と勉強をする私にシカクさんがそう尋ねる。ついでに頭を撫でて、私の大好物であるわらび餅をそっと横に置いてくれた。普段だったら飛び上がって喜ぶのに、今はその優しさが痛い。罪悪感だけが募っていく。私はジジイの、火影の言うことを破って脱走したのに。みんなに迷惑かけたのに。
「ほら、食えよ。」
どうして、どうしてどうして。なんで誰も怒らないの。いやな顔をして私を追い出そうとしないの。
「…なんで、優しくするの?」
愛されてるなんていう期待はしたくない。みんなジジイの命令で仕方なくやってるのだ。本当はきっと、面倒臭い餓鬼だって思ってる。
「なんでって…、」
「だっておかしいよ、誰も怒ってないの。」
「ハツヒ…。」
あぁもう、また困らせてしまった。そんな顔をしてほしかったわけじゃないのに。
「…ごめんな。」
どうして貴方が謝らなくてはならないの。悪いのは全部私なのに。
「私、拾われなきゃよかったね。」
消えて無くなれ
(所詮は捨て子)
(汚れた血は必要ない)
※シリアス続き(笑)