「死ぬかと思った…、」
「な、なんか…悪かったな。」
無事に宙吊りから解放された私に、さっきのフード少年が缶ジュースを渡してくれた。
「にしても、なんであんな所にいたんだってばよ?」
「いや、暇だったもんで…。」
言えない…大人しく出来なくて火影邸を抜け出してきましたなんて言えない…。「そういやさっきから火影邸の警報がうるせぇな。」耳がいいねフード少年。とりあえずここにいてもこの子達に迷惑をかけてしまうだろうし、今度こそ本当に帰ろうと思ったのだけれど。
「……えーっと、」
「暇なら一緒に遊ぼうぜ!」
「いやいや…あのね金髪くん、」
「違う違う!ナルト!うずまきナルトだってばよ!!」
どうやら強制的にお友達になりましょうコースを通らなくてはならないみたいです。金髪くん、ナルトはぽかんと口を開けたままの状態でいる私の手を握ってブンブンと上下に振った(肩が痛いとか言ったら怒られるだろうか)。その後は適当にみんなと自己紹介して(シカクさんちの息子がいた、やっべ正体バレてね?バレてんじゃね?)、缶蹴りのルールが分からない私のために普通の鬼ごっこをすることになった。
「ナルトつかまえたァァァァァァァ!!」
「ハツヒちゃんンンン!?クナイ投げんのは反則だってばよ!!」
ジジイとの修行以外でこんなに汗をかいたことがあっただろうか。鬼ごっこってこんなに楽しい遊びだっただろうか。
「ナルトが鬼だ!」
「ほらハツヒ、逃げるわよ!!」
みんなといればいるほど欲が膨らんでいく。帰らなくちゃいけないのに、頭では分かっているけれど心の中でまだ足りないまだ足りないと言っている我が儘な私が邪魔をする。もっと遊びたい、もっと一緒にいたい。私も、みんなみたいに普通の子でいたい。
「ハツヒ。」
聞こえた声は元気な子供の声ではなく、聞き慣れた低い声で。
「ここにいたのか。」
差し出された褐色の皺だらけな手に、もう逃げることは出来なかった。
さよならさんかく
(楽しい時間はもう終わり)