「あっちー……。」
未来から君に
次に入ったのは真っ赤な扉。中はその色を表すようにギンギンと太陽が照りつけていた。どうやらここも目的地とは違うらしい。見覚えのない場所にとりあえず歩き回っていると、すぐに体力がなくなった。
「し、死にそう…。」
とにかく休まなければと近くにあった広場のベンチに全体重を預けたのだけれど、暑いのに変わりはない。木も建物もなく、いくつかのベンチがただぽつんと置いてあるだけの広場には太陽の光を遮る物はなかった。だんだん意識が朦朧としてきて、視界がぼやけてきた。あーダメだ。ごめんなカノン、お姉さん助けに行けないかもしれないや。助けるなら今の私を助けて下さい。
バシャッ
───え?
なにこれ冷たい顔にかかったんだけど。え?水?なんで?
「こら!ゆうか!……す、みませっ…、」
悪戯かと思って顔を上げると、そこには見覚えのありすぎる白い髪が逆立った少年が、これまた見覚えのありすぎる茶髪の二つ結びで三つ編みをした女の子を横に深々と頭を下げていた。
「え…え?あの、」
「だっておにいちゃん、このおねーちゃんあつそうだったのよ?」
「…おーい、私の話を、」
「だからってひとにいきなりみずをかけたらだめだろう!」
どうやら女の子の方に悪気はなかったようで、一向に話を聞いてくれない2人の足元にはさっき水をぶっかける際に使用したと思われるバケツが転がっていた。うん、気持ちは嬉しいけどお姉さんはもっと優しくやってほしかったよ小さい夕香ちゃん。
「ほんとうに、すいません…。」
妹のために一生懸命頭を下げて謝っている小さなエース。そういや前にも同じようなことあったなぁ。暑いってグランドのど真ん中で大の字になってたら今みたいに水ぶっかけられたんだっけ。あの時は確か夕香ちゃんじゃなくて豪炎寺本人だった気が……。鼻に水入って睨んだらものすごい勢いで謝られたんだ。思い出したらおかしくなって、思わず吹き出してしまった。兄妹揃ってやり方が荒いなぁ…。だけど暑くてはダルダルになってた私を助けようとしてくれたんだよね。
「ありがとな。」
「え、あ……はい、」
少しだけ頬を染めた小さなエースに口角が上がるのが分かった。
優しさレッド
分かりにくいけど確かな、君の優しさの色。