1.




「朝倉…、泉さん?」




未来から君に




雷門中を卒業して2年目の夏。ちょうどフットボールフロンティア全国大会の時期。今年3年になった弟の葵から、雷門は予選を無事突破したとの報告を受け、思わず飛び上がって喜んだのは記憶に新しい。中学最後の大会だと頑張っているであろう弟や後輩達に心の中でエールを送った。この空の下を今日も彼らが楽しそうにサッカーしているのだと思うと、自然と口角が上がる。

そんな時、急に背後から声をかけられ振り返ると、いつも頭の片隅にある太陽のような笑顔のアイツによく似た少年が、こちらをジッと見て立っていた。





「え、っと………どちら様?」

「俺は円堂カノン!!」

「……円、堂?」





確かにその名字には聞き覚えがあった。けれど私の記憶の中にはどうしても目の前の少年と一致する人物が見つからなくて、首を傾げる。この少年は知り合いだっただろうか。





「俺、願いがあって来たんです!」





思い出さねばと記憶を辿っていると、少年──カノンがそう言った。

しかしいくら馬鹿な私でも、相手が仲間にそっくりだというだけでついて行はいかない。申し訳ないと思いながら断る言葉を探していると、カノンは声を上げた。






「ひいじいちゃんが、…円堂守が危ないんです!!」






もし、この時出てきたのがこの名前でなければ、私は少年を軽くあしらって逃げるように帰っていたかもしれない。つくづく奴には弱いなと小さく溜め息を吐いた。













変わり始めた過去



あの日々に必要ない時間なんて一秒もない。












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