「ホラホラ、男なら泣くな泣くな!」




卒業証書の入った筒を持ってぐっと背筋を伸ばしたなまえ先輩は、涙で顔をグシャグシャにした野球部の一人一人の頭を優しく撫でていた。先輩の目には泣いたような跡は見られなくて、相変わらず泣かない人だなんて頭の隅で考えていたけれど、これで本当にこの人と会えなくなるんだと思ったら、急に胸が締め付けられるように痛み出した。





「大河?」

「え、…あ、」

「どーした少年。青春は短いぞ!ボケーッとしてたらあっという間だぞ!」





ニカッと笑ったなまえ先輩にあからさまに溜め息を吐いてやれば、なんだよーと頬を膨らませて、軽く額を小突かれた。




「何?大河も寂しいとか考えてたの?」

「いやあ、煩いのが一気に片付くなあと。」

「そこは嘘でもいいから寂しいですって言おうか大河くん。」





なまえちゃんちょこっと期待してたんだけどなぁ…。なんて残念そうに言った先輩を無視してその場に腰を下ろした。グランドに集まった野球部は、茂野先輩とじゃれ合っている。





「茂野が来てからさ、スッゴい楽しかったな。」

「……そうっすね、」





あぁムカつく。なんでこの人は最後だってのに茂野先輩の話をするんだ。2人でいるんだから別のこと話してくれてもいいじゃないか。いや、別になまえ先輩と付き合ってるわけじゃないけど。でもだからこそ、先輩はこれから大学に行くわけだからなかなか会えなくなるんだし、最後に話した内容が茂野先輩じゃ嫌だというか、何というか。





「茂野のおかげでみんなと仲間になれた。」

「……そうっすね。」

「大河と、仲良しになれた。」

「…そうっす、………え?」





驚いて隣を見れば幸せそうに笑うなまえ先輩がいて、顔が熱くなっていくのが分かった。





「あの、」

「また大河と野球したいなあ!!」

「せんぱ、」




「大学で、待ってるから。」






あれ、俺の進路決まったっぽい。この人の大学ってどのくらいのレベルだったかな。何気に頭良いから確か無駄にハイレベルな大学に入ったんじゃなかったっけ。あー、勉強しなきゃ。






「待ってるよ、大河。」












追いかけて


(は!?何この問題、意味分かんねーんだけど!!)

(あぁ、それ今年の入試の問題だよ。)

(……先輩俺ちょっと無理だよ。)

(えー、大河は私と大学行くの嫌なの?)

(が、頑張る。)







※いやちょっとね、メジャー夢を漁ってたらなんかホラ、絵文字使ってたりするのがあって対抗心に火がついたというか……。

※いや、文才のない私が言うことじゃないんだけどね。










追いかけて