俺は、あの日から鬼道に対する認識を「シスコン」に変えた。



鬼道 有人という人間は、サッカー界に置いて有名なプレイヤーの1人で、「天才ゲームメイカー」と呼ばれるほどの実力を持っている。
だが、その実態はとんでもない「シスコン」だった。




奴の姉であるなまえさんは、俺達日本代表が寝泊まりする合宿所の管理人をしている。
差し入れなんかもたまにしてくれるし、怪我をするときちんと手当てしてくれる。
本当にいい人だ。
今日もなまえさんは差し入れをしに来てくれている。




「豪炎寺くん!レモンの蜂蜜付けはおいしい?」

「あ…はい。とてもおいしいです。いつもありがとうございます。」

「えへへ。なんか照れちゃうな…。」




正直、なまえさんは可愛いんだ。年上なら普通「綺麗」とか「格好いい」とかなんだろうが、なまえさんは「可愛い」。
そんな彼女に好意を持っていないと言うと、嘘になる。
だからこうして話しかけてくれるのは凄く嬉しいんだ。鬼道がいるからとても言えないが。


というか、現在進行形で俺は鬼道に睨まれている。


けれど、なまえさんがそんな鬼道に気づくはずもなく。終いには頭を撫でられた。




「豪炎寺。」




鬼道が動いた。
口は笑っているが、ゴーグルの中の目は外側からでも分かるほど鋭く光っていた。




「伝説のストライカーともあろう男が、昼間から人の姉を口説いていていいのか?」




ピキッ




「ほう…。それなら鬼道。お前こそなまえさんのことばかり気にしていて、練習に集中出来ているのか?天才ゲームメイカーさん。」




鬼道の言葉でスイッチが入った俺は、目の前のゴーグルマントと言い合いを始めた。




「お前が姉さんの何を知っていると言うんだ!!ただのシスコンに姉さんはやらない!」

「お前もシスコンじゃないか!夕香はまだ小学生だが、音無なんか中1だろう!?気持ち悪いんだよこのイソギンチャク!」

「春菜は可愛いから許されるんだ!気持ち悪いのはお前の方だろこの年中脳内ピンクのチューリップが!!」




むかつく。
今日ほど目の前にいるヒーローごっこ野郎が頭にきたことはない。
だいたい誰が脳内ピンクだ。お前なんか年中パラダイスみたいになってるんだろうが。
なまえさんは何故か笑っているし……。
あぁ。俺のイメージが丸つぶれだ。鬼道のせいだ。最悪だ。何もかも嫌になりそうだ。なまえさんに嫌われたら呪ってやる。


というか……俺は…………。


こんなにも彼女が好きだっただろうか?

最初は血の繋がりがないとこんなにも似ていないのかとか、結構脳天気な人だとかしか思ってなかった。
けど、なまえさんと話をしたりする内に……。




「豪炎寺くん?どうしたの?」

「っ……!」




自覚したら急に恥ずかしくなった。
しかも、おとなしくなった俺を心配したのか、なまえさんが顔をのぞき込んできたから俺の顔は今、間違いなく真っ赤だ。
あぁぁぁぁ!!顔が近い!
柄にもなく焦っている俺と、ニコニコと笑っている意中の相手。
この人はきっと俺なんか恋愛対象としてみていないんだろう。なんてことは考えなくても分かること。自分で言っているのにもの凄く悲しいのは多分それだけなまえさんが好きだってこと。




「だ…いじょうぶ……です。」




さほど大丈夫でもないが、心配をかけるのは男としてどうなのかと思うからそう答えておいた。




「姉さん。こんな奴の心配なんかしなくて良いですよ。」




鬼道がなまえさんの手を握る。
そんな些細なことでさえも今の俺には辛い。付き合っているわけでもないのに嫉妬している自分が醜く感じた。




「何言ってるの有人。私はいつだってみんなのこと心配よ?」




どんなに頑張っても、俺は「みんな」の1人。
鬼道 有人の、「大切な弟」の「チームメイト」。その程度でしかない。
届かない。叶わない。そんな恋をしてもただ苦しいだけなのに。




「特に豪炎寺くんなんか、頑張ってるから怪我しないか心配だもの。無茶しちゃだめよ?」




思わぬ言葉に俺は目を見開いた。

心配……してくれていた。俺のことを見ていてくれた。
単純だけど…それでも凄く嬉しかった。




「これからもがんばってね!豪炎寺くん!!」

「はい!!」











お姉さんは褒め上手!

(選手の精神状態を揺さぶるようなことはやめろ。)

(嫌だわ工藤監督。私が遊んでるみたいじゃないですか。)

(そう言っているんだ。)

(意地悪な監督。)

(…………………………。)

(ふふっ。冗談です道也監督!)

(…。し…仕事に戻れっ。)






※ナニコレ黒歴史だわ

※豪炎寺と鬼道さんが怖い








お姉さん!2