「不動くんって……格好いいね。」




鬼道なまえは俺、鬼道有人の姉である。
血は繋がっていない。姉さんは、鬼道家の実の娘だから。
歳は17歳。高校2年で、帝国学園高等部だ。佐久間や源田の先輩で、帝国サッカー部の元マネージャー。


俺は日本代表として今は合宿をし、日々練習に励んでいる。
さて、何故そんなところに姉さんはいるのか。
それは、姉さんがこの合宿所の管理人だからだ。本人は「アルバイトがしてみたかったの!」程度の感覚だが。

まぁちゃんと仕事はこなしているし、他の奴らとも仲良くしているようで。今のところなんら問題はない。
今日も俺達に差し入れを持ってきてくれた。……けど、それがいけなかったんだ。



「不動くんって……格好いいね。」

「っ…ゴホッゲホッゲホッ…、」





俺は飲んでいたドリンクを盛大に吐いた。吹いたんじゃない。吐いたんだ。



「ちょっと有人!汚いでしょ!?なにしてんのよもうっ!!」

「ね……さん…の、せい、ですっ!」

「あら、私は別に変なこと言ってないわよ?」

「あんな奴のどこが良いんですか!?見るからに不良じゃないですかっ!絶対駄目です!」

「人を見た目で判断しないの。良い子じゃない。ね!不動くん!!」



そう言って、姉さんは不動にニッコリと笑いかけた。
それを見た不動は、少し……いや、明らかに悪そうな笑みを浮かべた。



「ありがとうございます。なまえさん。」



それを聞いた姉さんは、「ほらね?」と言うように俺に振り返る。



「違う!姉さんは騙されてるんです!不動…貴様、姉さんの前だからって……汚いぞ!」

「何言ってるんだ鬼道くん。日頃お世話になってんだから、これぐらい当たり前だろう?」

「きゃ〜!すっごい良い子!不動くんきっと将来有望よ!」

「じゃあ俺、なまえさんと結婚します。」

「アハハハ!!ホント?それは未来が楽しみね!!」



ま…まさかコイツ等本気で……。
姉さんと不動がニコニコ(?)と笑い合っている。
あ………なんか視界がぼやけてきた。ゴーグル越しに見える姉さんの笑顔がぼんやりとしてきた。


いきなり静かになった俺に気づいた姉さん達は不思議そうにこちらを見ている。
けれど、俺はゴーグルに溜まってきた水に邪魔され、それに気づかなかった。



「有……人…?」



姉さんの声にハッとする。
その時俺の周りには既にイナズマジャパンのメンバーが勢揃いしていた。
俺はそんなこともお構いなしに姉さんの服の裾をギュッと握った。



「え?有人?どうし……。」

「ね…さんは………。俺より不動が好きなんですか?」

「えぇ!?いきなり何言ってるの?」

「それとも……豪炎寺ですか?円堂?綱海?風丸?虎丸?」



そんな一方的な質問に、姉さんは戸惑っているようだ。
それでも俺は我慢できなかった。姉さんが……盗られたような気がして。


「ゆ…うと……。」

「俺はっ!不動のように格好良くないし、豪炎寺のように背も高くはないです!」


円堂のように素直でもない。

綱海のように明るいわけでもない。

風丸のように優しいわけでもない。

虎丸のように可愛らしいわけでもない。

けど、



「それでもっ!なまえ姉さんを思う気持ちが劣っているとは思えません!!」



叫んだ後、何故か本当に悔しくて、裾を掴んでいる手に力を込めた。
すると、頭にふわりと暖かいものが乗った。



「姉……さん…?」

「…別に、そう言う意味で言ったんじゃないんだよ?ただ…何となくというか…その……。」




「あのね、ちゃんと有人のことも見てるから。それに有人は格好いいよ。私の自慢だもの。」



姉さんはそう言ってさっき不動に向けた笑顔より、何倍も優しい、何倍も綺麗な笑顔を俺に向けた。











お姉さん!!

(有人は本当に可愛いわ。)

(なまえさん……鬼道で遊んでません?)

(やぁね佐久間くん。そんなことないわよ。)

(鬼道……この人確信犯だぞ…。)










お姉さん!