「君、アホやろ。」
せっかく会えたのに。そう言って溜め息をついたなまえさんはクシャクシャと乱暴に俺の頭を撫でた。
「わざわざライオコット島まで来た意味ないやん。」
「……すみません。」
「手術するからアメリカ帰るって何?嫌がらせ?」
「……すみません。」
「一ノ瀬くんウチのこと嫌いなん?」
「大好きです!!」
「そりゃどーも。」
イナズマジャパンとの試合が終わって即刻入院となった俺を訪ねてきてくれたなまえさんは、俺の顔を見るなり大きな溜め息をついた。邪魔になるからと出て行った土門の気遣いも、今回は欲しくなかった。嬉しくないわけではないけれど、正直なところ今なまえさんと会うのは色々とキツい。
「……負け試合とか、格好悪いですよね…俺。」
「……。」
「…しかもっ……途中で交代され、るし、」
足の怪我がなかったら。
もっともっと戦えたはずなんだ、勝てたはずなんだ。
「俺、まだ立てるからっ!!まだ戦えるから!!」
「一之瀬くん、」
「絶対に負けない!だから、」
「一之瀬くん。」
ふわりと鼻を掠めた優しい匂い。キュッと、少し強いくらいに抱きしめられて思考が止まった。
「イナズマジャパンとの試合は終わったんや。」
試合は終わった。なまえさんのその言葉は厳しかった。まだ瘡蓋も出来ないままのじくじくとした傷口を、更に広げられるようだった。痛くて、辛くて、苦しくて。だけどなまえさんのその声は震えていた。
「もう、試合…終わってんねんで。」
「なまえさ、」
「君は、負けた。」
震えているのはやっぱりなまえさんの方だった。
「でも、それでええねん。」
「だって負けたら君、悔しくてまた帰ってくるやろ?」
少し離れたなまえさんの顔は笑っていた。
女神の微笑み
(あぁ、俺はきっとこの人のために戻ってくる)
フェニックスは何度だって蘇る。