「お、姉ちゃ…ん?」
記憶が戻って目を覚ました時、一番最初に思い出したのはイナズマジャパンのマネージャーをしているなまえさんだった。
「思い出した、の?」
冬花。そう私の名前を呼んだ声も、どことなく不安そうな顔も随分と懐かしい。今までずっと一緒にマネージャーをしてきた筈なのに、私の手を握るその姿でさえ久しく思えた。
「お姉ちゃん、わた…しの、」
「うん。」
「か、ぞく…?」
「うん。」
「おね…ちゃ、」
涙が頬を滑り落ちた。思い出した過去が辛くて悲しくて、家族が傍にいてくれたことが嬉しくて。色々な感情がぐちゃぐちゃになって、余計に涙が溢れてくる。だけど私を抱きしめてくれるなまえさんの、お姉ちゃんの優しい匂いや体温に酷く安心した。
「冬花。」
変わらない、愛しい人。あの日失ってしまった筈の「家族」という居場所は、お姉ちゃんがずっと守ってくれていた。たった1人で、ずっとずっと私を待っていてくれた。私がお姉ちゃんのことを何も覚えていないと知っていて尚も傍にいてくれた。愛していてくれた。
「お帰り、冬花。」
ただいまと言う代わりにコクンと頷いて震える手でお姉ちゃんを抱きしめ返しす。
1人にしてごめんね。お姉ちゃんだってお父さんとお母さんがいなくなっちゃって辛かったのに、忘れたりしてごめんね。寂しかったよね。苦しかったよね。守ってくれて、愛してくれて、ありがとう。
「お姉ちゃん、」
大好きだよ。
日だまりのように暖かい
(声を聞くだけて安心して)
(隣にいてくれるだけで幸せになれる)
※冬花ちゃんのお姉ちゃんは一期から円堂達といたっていう裏話