メモ
▽シェゾとわちゃわちゃ
「お前が、欲しい!!」
一体、何なのだろうか。
珍しくお休みだったアコール先生の代わりに来たのはヨボヨボのおじいちゃんで、教科書を読むにも説明をするにもか細いその声はお母さんの子守歌よりも威力が強く、成績を下げたくなかった私は瞼を閉じまいと必死に耐え続けた(結果的に眠ってしまったのだけれど)。ようやく全ての授業が終わり、帰ろうと校門を出る。すると目の前にはクラスメートのアミティと片手に買い物袋を持った格好良いお兄さんが。一体どうしたんだろうか。ナンパ?カツアゲ?
「あれー?どうしたのシェゾ。」
「どうしたのじゃない!ハンカチ、昨日忘れていっただろう。」
「わぁ!ありがとう!!」
「洗濯はしておいたからな。」
見た目によらず家庭的な方だった。絡まれているわけじゃないみたいだし、眠いので今度こそ帰ろう。そうして2人の間を通ったのが不味かった。
「……お、お前…。」
「はい?」
ドサリ。お兄さんの持っていた買い物袋が落ちて、卵が悲惨な状態になっている。あぁ、勿体ない最近卵高いのに。
2013/09/01 23:23
▽まぐるーくで罵倒の日
「ただいま。」
図書館から帰ると家にあいつの姿はなく、代わりに「お買い物にいってくるね★君のスイートハニーまぐろ」というメモが置いてあった。捨てた。
リビングのソファに腰掛けて、借りてきた本を読む。聞こえるのはページをめくる音と蝉の声だけ。
蝉は子孫を残すために己の短い時間を削って必死に鳴くけれど、子孫を残す訳でも短命な訳でもないあいつはどうしてあんなに五月蠅いのか。
あいつと共に生活するようになってから久しぶりの独りきりの時間は、寂しくなるほど静かだった。
「………遅いな、」
ふと、一段落ついたところで窓の外を見てみると空は既に赤く染まっていて、蝉の声もほとんど聞こえなくなっていた。あいつはまだだろうか。
迎えに行ってやろうかなんて、そんなことを考えていたら玄関の方でガチャリとドアの開く音が聞こえた。帰ってきたみたいだ。
「たっだいまダーリン★」
あいつも蝉みたいに期間限定だったらいいのに。
溜め息をついてソファに座り直し、再度本を開く。その際、視界の端のカレンダーにでかでかと「8月10日 罵倒の日!!」の文字が見えたが、あえてスルーしよう。ボクは何も見ていない。
2013/09/01 23:19
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