小説 | ナノ



商いの中心地、各国への輸入・輸出 の中継点。 今日も朝から賑わうこの街で一日だ けの休息が与えられた。

本来ならば依頼主でもある仲間の女 性と行動を共にするべきなのだが今 日は自由にしてくれて構わない。と 言われたのなら不安もあるが言葉に 従わざるを得ない。 何もすることもないからこそ武器の 手入れでもするかと宿へと戻ろうと するのを阻止するかのように後方か ら少々上から目線の声が聞こえた。

「ちょっと、待ちなさいよ」
「どうした、アニーミ」
「今日は私に付き合いなさい」
「断る」
「いいから!」

強引に腕を引っ張り進むその先は武 器屋。 の、中でも彼女が所持するタイプの 拳銃が陳列されたエリアに導かれれ ば目的を理解した。 辿り着いて腕をつかむ手が離され て、素直に言いたくないのか少し顔 を背けて彼女が言う。

「……どれがいいか教えなさいよ」
「物を頼むならそれ相応の態度があ るだろう。……まあいい、使いやす さならこれだろうが、手入れが難し いな。他にも色々あるが、何よりも 重要なのはお前の手に馴染むかどう かだ」

自分なりに女子供でも使いやすいだ ろう物は知ってはいるが、何よりも 重要視すべきは使う本人が使いやす いと思うか否か。 一つ一つその手に持たせ、店主に頼 み一度だけ試し打ちをさせて。 納得いくものがあったのか満足気な 表情見せたのを見逃さずに、店主に 購入の意思を伝え、金を払い、もう 一丁を手に彼女の元へ。

「見つかって良かったな。買っておいたぞ」

「何で分かっ……リカルドの奢りって事?」
「残念だったな、これはパーティー の金だ」


買ってきたことに対する驚きが垣間 見えた直後の期待の篭った視線。 その期待が外れたと分かれば頬を膨 らませわざとらしく不機嫌な表情浮 かべた。

全く、困った奴だと機嫌を直してお かないと後々面倒なのもあり手持ち を確認してから声を掛ける。

「そんなにも俺の奢りがよかった か?」
「当然でしょ」
「……仕方ない。適当にメシでも食 わせてやる」
「マジ!?」
「分かったらさっさとついてこい」

そう言い捨て踵を返して武器屋を後 にして慌てて早足で後ろをついてく るのが分かればさっきとは状況が逆 だなと小さく笑った。

彼女の好物である美味い肉料理が食 える店へと連れて行けば途端に機嫌 がよくなり、随分簡単に機嫌が直る ものだと感心しながらも美味そうに 満面の笑みを浮かべているのを見れ ば連れてきて良かったと思うので あった。

たまにはこんな一日があってもいい だろう。 この時間を共有するのがこの少女で 良かったと、思わずにはいられなかった。






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