一緒に帰ろう 


驚く店員を後にし、買い出しを済ませ私達は帰宅した。ここからが大変で、持っていくもの、置いていくものを分けるのに数日かかってしまった。ついでにちょっとだけ掃除もする事にした。・・・次返ってこれるのはいつかはわからないけれど。

「あ」
本棚の奥の方に、小学校の時の卒業文集を見つけた。

「ふふ、私こんな事書いたのかなぁ?」
過去の自分につい笑ってしまう。

「なんだい?」


マルコが横から覗き込む。

「これ、卒業文集っていって・・・子供の時に将来の夢とか書いておくの」

そこには“すてきなだんなさんを見つけて幸せに暮らしててよ!絶対!・・・あと人の役に立つことがしたいなぁ。”と書かれていた。
「かわいい字だねい。いくつくらいの時だい?」

「11歳くらいかな。それにしては子供っぽいよね。もっとちゃんとした事書いたと思ったんだけど」

「***の小さい頃、って感じがするよい。」

マルコがそう言ってくれて二人で笑い合った。

「夢は叶った・・・のかな」

「あぁ、すでに叶ってるだろい。あっちでの活躍は俺が認めてるよい。・・・ちゃんと素敵な旦那さんになれるよう、***を大切にするよい」
そういってマルコは頭を撫でてくれた。

そうだ。もう夢のままではいられない。これから実現のために、生きていかなければいけない。
残念ながら卒業文集は持ってく事は出来ないので、そっと棚に戻した。

小さい頃は、将来の事を考えるのが楽しかった。これから出会う人、これからやる事、全部が明るく包まれていた。これまでの人生を振り返ってみても、私は幸せだったんだと思う。友達がいて、両親がいて。たくさん食べて寝て・・・。社会人になってからはきつかったけど、なんの変哲もない普通の人生でも幸せがきちんとあった。

これからは、自分が思い描いていた将来とはまったく違った道を歩む事になる。・・・想像もつかないような困難が待ち受けてたりするのかな。でも、私の隣にはマルコがいる。そんな不安なんて、小さな物だと思った。私は、マルコの世界で、生きていく。

    ***

「よし、じゃあ登るよい」

「うん。」

翌日。準備を済ませた私達は部屋を出て、丘に登る事にした。

「・・・気持ちの整理はついてるから、大丈夫だよ。マルコ」

「ならいいよい・・・手繋ぐかよい?」

「ううん、私に合わせてたらマルコ疲れないから、先に行って?」

「おう。・・・もし先に消えても待ってるよい。ずっと」

マルコはいつだって私が欲しい言葉をくれる。

「ありがと!さー、いこっか!」

そういって私達はてっぺんを目指して走り始めた。

    ***

きつい!めちゃくちゃきつい!なにがって後ろにお酒の瓶抱えて坂道走る事が!
疲れる事が条件である以上、どのくらい疲れなければならないかという所がわからなかったため、事前に二人でとりあえず死ぬ気で走ろうと言い合っていた。マルコの姿はすでに見えない。呼吸が荒くなり、足も前に動くのが遅くなってきている。こんな事なら、やっぱりあっちでエースと運動しとくべきだったと後悔した。

酸欠のため、目の前がチカチカしてきた。頂上までもう少し。
マルコ、マルコ。
あ、そういえば白ひげさんに着いたらなんていうか考えてなかったな。エースに久しぶりにあったら泣いちゃうかも。クルーの皆にも、また挨拶しないとなぁ。そんな事をぐるぐる考えているうちに、意識が遠のいてしまった。







自転車に乗っている時のような、風が顔に当たる感覚がする。目を開けると、空の雲の上。
でも落下しているわけではなさそうだ。

「マルコ・・・?」
下を見るとふわりとした羽毛の感覚。いつだったか、マルコに乗せてもらって空中散歩をした時と同じ感じ。ピィ、と甲高い声でマルコが返事をした。

「戻って、これたんだね」

マルコが降下し始めて、雲を抜けると、その先にはモビーディック号の帆先が見えた。
青い海と、空と、マルコの炎。
葵い炎が青々と燃えていて、私はこれから起きる出来事に期待に胸を高鳴らせたのだった。










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