釣った魚に餌をやらない、という言葉があるけれど、マルコには当てはまらないと思う。普通であれば男の人って人前でベタベタするのを嫌がったりするんだろうなと思っていたけど、マルコは当てはまらなかった。
「***!エースと釣りなんかしてたら危ないよい!」
「あ、マルコ。いいんです。今日お皿何枚か割っちゃって、反省の釣りなんです。」
エースと並んで船の端に座り、釣り糸を垂らしていた時に、後ろからマルコが声をかけてきた。
「そーだぞ!俺が上から驚かしたら***のやつ、うわぁ!って声だして両手を上にあげたんもんだから、持ってた皿ぜーーんぶパリーン!あっはっは!」
「原因はエースじゃねぇかよい!」
「いいんですよマルコ。最近部屋にこもりっきりでこうして海眺めるのも無かったし。今日は大物釣ってみせます!夕飯楽しみにしててくださいね!」
「今日は海王類の姿焼きがいいなー!!俺がその場で焼いて食べさせてやるぞ」
「あ、エースの火の能力はこんな時に便利なんだね」
「ん。他にも色々出来るぞ。こーして指の先くらいの火も出せるし…。それこそ海王類を丸ごと焼く炎だって一気に出せるしな!」
「一家に一人エースいたら困んないよね。食費が大変そうだけど」
「ん〜食費で行くと俺の弟の方がよく食べるぞ。ゴムゴムの能力者なんだが…」
そういってエースの弟の話を聞いていると、後ろからトンっと足踏みの音がきこえたと同時に、隣にマルコが座った。正確には、私とエースの間に、だけど。
「うわ!なんだよマルコ」
「俺も海が見たくなったんだよい」
私は最近マルコの性格がわかってきた気がする。ヤキモチ焼きで、負けず嫌い。でも私の前だけでだけど。
「そうですね。海、綺麗だもんね」
今日の天気は快晴。春島の気候だろうか。周りには島も船もなく、空には雲ひとつない。
「いい天気だな〜!」
「うん、いい天気。こういう時に散歩できたら最高なんだけどな」
ここは船の上だが、元の世界のことを思い出す。お休みの日とか、公園まで散歩していたっけ。そこの公園は季節ごとに花が変わり、綺麗だったのを覚えている。
「…***は俺の能力を忘れたのかよい?」
自信たっぷりな声でマルコがそう言った。
「え、マルコの能力って不死鳥の…」
マルコが後ろへ行くと、たちまち葵い鳥の姿に変わった。
顔で背中を差す。乗れということだろうか。
「あ、でもまだエースとの釣りが」
「いーよ!今のマルコ邪魔したら後がこえーしな!***がいなくても海王類は釣ってやるぜ!」
「そっか。じゃあ、任せた」
エースに釣りを任せ、マルコの柔らかな背に乗る。
私がきちんと乗ったことを確認すると、ふわりと体が浮く。
一番最初は、足で掴まれて空を飛んだからあんまり記憶はないけど、
こうして乗るとすごく気持ちが良い。マルコが一気に上まで飛ぶ。
「うわぁ…!」
なんて爽快なんだろう。春風が頬に辺り、船の上へとどんどん上がる。
「マルコ、とっても素敵!!ありがとう!」
ピュー、と甲高い鳴き声でマルコが応えてくれた。
元の世界にいたら絶対に見ることがなかった光景。マルコのふわふわした青い羽毛を楽しみながら、遥か下にある船と、海を眺める。
この世界に来てよかった。
マルコと出会えてよかった。
空を堪能しながら、心からそう思った。
(***!海王類とったぜ!)
(えー!エースすごいね!夜ご飯たのしみ!)
(わりぃ!俺一人で食っちまった!)
(やっぱり次から***はエースを見張っといてくれよい)