【マルコ視点】告白


お酒の勢いで、というのは好きじゃない。というより、もうそんな勢いで何でもやれるような年齢ではない。だから先ほどの告白は、少しだけ後悔している。気持ちを伝えた事に対してではなく気持ちが溢れて、つい口にしてしまった事がだ。

きっと***も驚いた事だろう。あんな場所でいきなり「俺にしとけ」だなんて伝えられて。
つい、口に出して伝えた告白はちゃんと彼女に届いたのだろうか。いや、きっと聞こえていたのだろう。とても驚いた顔をしていたから。返事を聞くのが怖くて、話もそこそこにその場を離れてしまった。

あの後はふらふらと中心に向かい、浴びるように酒を飲んだ。珍しく酔いが回ってしまった。

(明日から、どんな顔して話せばいいんだよい…)

付き合ってる相手や、結婚相手がいるかと問えば、募集中なんて言うもんだからここで伝えるべきだと思ってしまったんだ。
***はいろんな奴を虜にする魅力がある。それは女性らしさや体つきなんかじゃなくて、人間として良いということ。その証拠に最初は警戒していたクルーも、隊長格もみんな***を頼りにしている。仕事を任せるとは信頼の上に成り立っているから。…だから、誰かのその信頼がいつか恋愛感情になるのではと少し怖くなった。
(俺ァ、こんなにガキみたいな男だったかねい)
いくら考えても、明日からどういう風に話すか、答えはでない。 

(あーもう女々しい奴に成り下がっちまったよい!)
眠気覚ましに顔でも洗ってくるか、と扉を開け、すっかり暗くなりひんやりした廊下をゆっくりと歩いた。


ーーー

ゆっくり、ゆっくり木が軋む音を聞きながら先へ進む。

と、その時目の前の真っ暗闇からトタタタとこちらに走ってくる音が聞こえた。

「…わっ」
とすん、と胸のあたりに軽い感触。
「…***?!」

「マ、マルコ…?」

まさか、今一番気まずい相手と会うとは。

「…こんなとこでなにしてんだよい?」

「え、えと…さっきの事でお話しをしたくて。マルコの部屋まで行こうとしたんですけど」

「…そうかよい」

「夜に一人で歩くの、ちょっと怖くて。…だから小走りできましたっ」

そんな可愛らしい事をいう***。ふいに、抱きしめてしまう。
「…こんな薄着で外歩いたらダメだって、いつも言ってるだろい。体、冷たいよい」

「…早く、会いたかったんです。」

「…俺も会いたいと思ってたよい。じゃあ俺の部屋に行くかい?」

「…ちょっと、風に当たりませんか。空を見たくて。」

「おう、じゃあ甲板に行くかい」

***と一緒に甲板にでる。ひんやりした風が酒に酔った体にはちょうどいい。
今日の星空はとても澄んでいて、満月が登っていた。そのおかげではっきりと***の顔が見えた。

二人で夜空見上げる。

「…マルコ、私、伝えなきゃいけない事があるんです。さっきの返事はそれを伝えてからでもいいですか」

その言葉にどきりとする。

「…なんだよい」

「まずは、私の命を助けてくれてありがとうございます。本当に感謝しています。この船に乗せてもらって、仕事まで任せてくれて。みんな優しくて…。ぜんぶぜんぶ、マルコがいたからです。

こんな素敵な世界にずっといれたら、って思います。」

「こんな世界…?」
その言い方に疑問を覚えた。

「最初に助けられた時に、マルコが勘違いしてたの、わざと訂正しなかったです。私はこの世界の住人じゃありません。だから、いつまた消えちゃうかもわからないんです。だからマルコにはもっと素敵な人が、」

「それで、俺の質問の答えはなんだよい。」

その言葉を遮り、先ほどの答えを聞く。

「えっ?!え、だから私この世界の住人じゃないって、」

「…ずっと言いたかった事はそんな事かよい?!このグランドラインはなにが起こっても不思議じゃないよい!時を止めたり、時空間に飛ばす能力もあるくらいだよい!そんな、事を」

ずっと一人で、抱えてたのか。

「…だって、みんなに、マルコに嫌われたらどうしようって、ずっと心の奥で、」
***が俯き、声が震える。嗚咽が聞こえ、泣いてしまった。
そんな***を力いっぱい抱きしめる。
「本当はずっと心に決めた人がいるとか、エースが好きとか、後半年で死ぬとか余計な想像しちまったい」

さらさらと***の髪を梳かし、頭を優しく撫でる。
「ぐすっ…だから、私が返事を聞く前に、マルコから無かったことにされるかと思ってました」

「俺はそんな薄情じゃないよい」

例え、後半年の命でも。心に決めた人がいたとしても。全力で振り向かせるつもりだったし、医者として治すつもりだった。それほどまでに***の事を、

「…だから、***。俺の側に、いてくれよい」

「はい!私もマルコの側にいたいです。…だ、だいすき、です」

「俺も、大好きだよい」

そういって上を向いた***の目にはまだ涙が溜まっているものの、いつも通りの笑顔で答えてくれた。


(すっかり冷えちまったよい。俺の部屋にいくかよい)

(はい!お邪魔しますー)

(眠いなら、ベッドも使って、)

(いやらしいことしませんよね?)

(それは約束できないよーい)




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