日もすっかり暮れて、宴が始まった。私の歓迎会とはいうものの、みんなそれぞれ好きに盛り上がっている。このほっとかれる感じが逆にありがたくはある。
私は厨房から、みんなが食べられるように大量に作ったちらし寿司をもって来た。
「親父さん、これお世話になっているお礼です。私の国のちらし寿司っていうんですけど、お酒に会うので、もしよかったら!」
「お?***が作ったのか?グラララ!そりゃ楽しみだ!食わせてもらうぞ!」
味はきちんとサッチさんに確認してもらったので大丈夫だ。
「あぁ、確かに美味かったよい」
「なんだァ、俺より先にマルコにやっちまったのか?」
「えと、味見をしてもらっただけで・・・」
「俺だけ特別に、先にくれたんだよい」
自慢するようにそういうマルコ。本当はその前にサッチさんが食べたんだけど、嬉しそうだし黙っておこう。
「グラララ!特別か!そりゃいいな。…うん、たしかにこりゃ絶品だな。***はいい嫁さんになるぞ!なァ?マルコ」
「そ、うだねい」
白ひげさんがマルコにそう振ると、マルコは照れ臭そうに顔を背けた。
マルコのお嫁さんか・・・。私だったら一日中甘やかされて美味しいものを作ってあげて、それから・・・
って何考えてるんだ!たしかにサッチさんに言われて、マルコと他のクルー達の想いは違うけども!
その考えを振り払うように頭を振る。
「親父ー!ちょっと来てくれよ!エースが酒飲みすぎて火火吹きまくって暴れてんだよー!」
向こうから楽しそうなサッチさんの声。白ひげさんが笑いながらそちらに向かう。
マルコと、二人きりになってしまった。
「・・・***は、国に旦那はいなかったのかよい。そのくらいの年齢だろ」
「えっ!?あー、私の国ではまだ結婚はしてる人は少ないですよー。付き合ってる人も、特にいなくて」
募集中でした、あははとマルコを見上げてそう笑い飛ばす。
マルコはそんな私を見据え、視線を逸らさない。
どきん
どきん
どうしよう、ここでそんなに見つめられたら、
本当に私、マルコのこと、
「じゃあ、俺にしとけよい」
宴の喧噪の中、マルコが囁いた小さな一言。
周りはとてもうるさかったのに、一瞬にして二人の間だけ、時が止まったようだった。
(私で、いいんでしょうか)