先ほどのケンカを治めるために、マルコに「二人っきりでお茶飲む約束があったじゃないですか!」と無理矢理マルコを連れ出した。
向かった先は食堂。
「***、俺の部屋じゃないのかよい」
「ちょっと今日の宴の件でサッチさんに用事があるんです!食堂でもお茶は出来ますよ」
明らかにがっかりしてるマルコ。だってあのまま続けてたら血気盛んな人達すぎて、すぐに乱闘騒ぎになりそうだった。そういうところもみるとみんな海賊だなと改めて思った。
「ちょっと宴で出す料理を、一品だけ作らせてもらおうかと思って。」
「***が料理つくるのかよい?そりゃー楽しみだ」
そういって食堂につくと、奥の厨房で仕込みをしていたサッチさんに声をかける。
「サッチさん、今日の宴の料理、私の故郷の料理を出したいんですけどどうでしょうか」
「お、***ちゃんがつくるのかい?いいなそりゃ。どんな料理だ?」
「えっと、ちらし寿司っていって…」
そういって絵を書いてみた。
「ふんふん。コメと…魚とビネガーと調味料ありゃいけるな!ちょうどこの前の島で綺麗なエビが手に入ったし、使うか!」
「ありがとうございます!作り方は簡単なので、頑張ります。」
「俺も手伝おうか?」
「マルコには一番最初に味見してもらいたいので、大丈夫です!親父さんが喜んでくれるか味見てくださいね」
「…!わかったよい、楽しみにしてるよい」
そういって食堂の椅子に座り、新聞を広げる。
(よし、夜まで時間もないし作っちゃおう!)
厨房に入り、作業をする。
「しかしよー、***ちゃんはいつのまにかマルコは呼び捨てなんだな」
サッチさんが魚を切ってくれたりビネガーの味をみてくたりサポートしてくれた。お互いに作業を続けながら話す。
「え、あっほんとだ…気付きませんでした。マルコ、気を悪くしてないでしょうか」
「いやむしろあいつ喜んでたぜ。***が呼び捨てなのハルタとエースだったろ。あいつら年下だから違和感なかったけど、マルコはなぁ。そんで二人は最初から仲良いよな〜羨ましいぜ」
「マルコが私に優しくしてくれるから、答えたいって思うんです。皆さん優しいんですけど、マルコは違う優しさがあるっていうか。」
「そうかー、でもそれってさー
恋じゃね?」
カタンと音を立てて私の手から木べらが落ちた。
「あああ!木べら落としました!洗います!え、恋って、誰が誰にですか」
「***ちゃんが、マルコにだけど…ちょっとちょっとちょっとそれシンクじゃないよ、お湯張ってる鍋だから!危ないから!」
「えっ、私は何をしようとしたんですか」
「木べらを洗おうとシンクに持っていこうとしてたけど、鍋に突っ込もうとしたので、俺が止めました。半分、冗談のつもりだったけどそのテンパりようなら、もしかしてほんとに…」
「おーい!サッチの声で危ないって聞こえたけど、***が怪我でもしたかよい?!」
先ほどのサッチさんの声を聞いてマルコが駆けつけてくれた。ちょ、今はタイミングが悪いから!
「だだだ大丈夫です!ちょっと木べら落としただけなので!マルコは休んでてください!お楽しみは後で、です!」
「お、おう。じゃあ出るよい。怪我したらすぐに呼べよい」
マルコが厨房を出る。
マルコが出て行った扉をみて、サッチさんがため息をつきながら答える。
「俺、てっきりもう二人はできてるとばかり思ってたけど、違うんだね」
「違いますよ!でも、恋かと聞かれれば…否定はできません」
「そっか。いやぁワクワクするなーこういうのは側から見るのが一番楽しいんだよな」
(恋はいつでもハリケーンとはいうけれど)
(私の場合は、波のようにゆっくりと押し寄せてきました)