プリズム | ナノ





今夜は流星群が流れる。


星が瞬く夜空を眺めながら風の噂で聞いた流星群を彼女は一人、待っていた。銀河を旅する数多の星々の中でも流星群は一際美しいのだと云う。彼女は誰も居ない宮殿の自室から星空を見上げた。小さく息を吐いた時、星空を滑る光が表れ彼女は思わず息を呑み目を見開いた。あぁ…、と感嘆の声を溢した彼女の眼前には待ちに待った流星群が星空の絨毯の上をなめらかに滑っては消えて行く。儚くて美しい、星の旅。時を忘れそれに魅入る彼女の耳に小さな悲鳴が聞こえた気がした。彼女は眉間に皺を寄せた。そして気が付いた。目の前を通り過ぎた一つの流れ星に。それは彼女の暮らす宮殿の庭園へ落下し、その衝撃で宮殿を揺らした。彼女は侵入者を排除する為、ドレス姿から戦士へと姿を変えると片手に短剣を握り締め部屋を出た。先程流星群を眺めていた人物とは思えない程に彼女の表情は酷く冷たかった。

さく、と彼女が庭園の草を踏んだ。風が彼女を導くように吹く。その導きのままに彼女が歩みを進めるとそこには先程落下した星の残骸が広がっていた。侵入者がいるかもしれない。彼女は剣に力を込めた。
「……ぅ…っ」
煙の向こうに微かに人影が見える。彼女はゆっくりと近づき、そして剣を構えた。少しでも動いたら斬る、そう思っていた彼女だったが目に飛び込んできた姿に彼女は剣を持つ手を下ろした。
「流星…」
そこにいたのは白い肌に良く映える漆黒の長い髪を持つ一人の少女だった。