砂隠れ | ナノ




「風影様がまた木の葉にいらしてるみたいよ」
「最近よく来るわね〜。木の葉と新しい事業でもするのかしら」


風影こと我愛羅はここ数ヶ月、2週間に一回くらいは木の葉に顔を出している。歴代の影からしたらありえない頻度だ。

その理由を知る者からすれば、おもわず笑ってしまうようなことで。


「………」
「我愛羅ってば、そんなそわそわしなくても**だったらもうすぐ来るってばよ」
「…そわそわなどしていない」


恋煩いの我愛羅、木の葉の上層部ではそんなことを言われていた。事実、我愛羅には木の葉に意中の女性がいる。


「失礼します、**です!」
「!」
「お、来た来た」
「入っていいぞ」
「はい、失礼します!」


ガチャ、とドアが開いた先には我愛羅が待ち焦がれていた女性。


「!風影様もいらしてたんですね!」
「…久しいな、**」
「はい!お久しぶりです!」


木の葉の中忍の**。それ以上でもそれ以下でもない。特記事項として言えば、笑えてしまうほどの鈍感ということ。


「**、砂で有名な和菓子を買って来たんだ。あとで一緒に、「**〜、忘れ物〜……あ」
「あ!サクラさん!何か忘れていましたか?」


彼女はモテる。天真爛漫で明るい性格で、常に一生懸命。少しドジだがそこがまた男心をくすぐる、そんな彼女に恋した男性は数知れず。しかし今まで誰1人として思いを告げることすら叶わなかった。

彼女に告白などしようものなら、なぜかいつも誰かしらの邪魔が入ってしまう。我愛羅も隙あらば**をせめてデートにでも、と思うにも関わらず、毎回何かしらの邪魔が入ってしまう。なぜか。


「わっ、書類がもう一枚あったの忘れてました…!」
「はいこれ。…あと、ごめんね?我愛羅くん、」
「?」
「…慣れている」


こんなことで心が折れていてはキリがない。今日も今日とて、我愛羅の戦いは幕を上げる。


「**、実は砂の里で有「おーいナルト〜、書類持ってき、…あ」
「あ!キバ上忍!」
「よ、よぉ〜、**…今日も元気そうだな…」
「はい!とっても元気です!赤丸くんはどうですか?」
「……すまん、わざとじゃない」
「?」


ジトッとキバを睨む我愛羅。いつものことに思わず苦笑するナルトとシカマルとサクラ。しかしこんなことでへこたれる我愛羅ではない。こんなことは日常茶飯事だ。

もう一度息を大きく吸って**の腕を掴む。


「**」
「っは、はい…?」
「和菓子を買って来たんだ。あとで2人で

グウゥゥゥゥゥ……


「わっ、!」
「………」
「すっ、すいませんっ、朝から何も食べてなくてッ…!」


勢い良くなる**のお腹。顔を赤らめる**と、悲しみに打ちひしがれる我愛羅。今日は腹の音か…。と思う聴衆。前回は**の盛大なくしゃみだった。


「……食べるか?」
「え?」
「砂で有名な和菓子だ。」
「えっ、そそそんなっ、悪いです!」
「あいにく、俺は腹が減ってないんだ。是非**に食べて欲しい」
「そっそんなっ、わたしなんかが…」
「和菓子は嫌いか?」
「っ、す、…好きです…」


お腹が鳴ったことに対して赤面しているのに、我愛羅は**の表情と言葉を間違っているとわかりつつも告白のように捉えてしまう。

心拍数が上がるのを感じながら、一緒に食べるはずだった和菓子の袋を手渡した。


「あ、りがとうございます…風影様は、本当にこんなわたしにもお優しいんですね…」


はにかみながら我愛羅を見つめる**。誰にでもじゃない、**だけ特別なんだ。**じゃないと、わざわざ菓子を買って来たりこんな遠くまで足を運んだりしない。


「**だけ、特別なんだ」
「…え?」
「俺は、誰にでも優しいわけじゃない」
「風影、様…?」
「**、俺はお前が、」



好きなんだ。



そう言葉にしようとした時、ぶえっくしょい!と大きなくしゃみ。びっくりした**と我愛羅は本人を見た。


「…悪いってばよ、我慢できなかっアイターーーッ!!」
「何してんのよ!そのくらい我慢しなさい!!」
「いや、人間の生理現象だってばよ!」
「あーあ、せっかくチャンスだったってのによぉ…」
「……」
「ご、ごめんってば、我愛羅…」


なんでみんなして我愛羅に謝罪を入れるのか、**には分からなかった。謝るほどことを**が知らない間にしているのかもしれない。そんな呑気なことを思いつつ、ひんやりと冷たい我愛羅の手に自分のを重ねた。


「!?」
「風影様の手、冷たくて気持ちいいですね」
「なっ、そ、そうか…ッ」
「この手で里を守ってるなんて、本当に尊敬します…わたしも頑張らなきゃって思います!」
「…お前は、十分頑張っているのを、俺は知っている」
「え、?」
「できることからでいいんだ、あまり無理はするな。心配になる」
「風影様…」


**と我愛羅の視線が絡み合う。我愛羅は意を決して、口を開く。


「砂に、来るつもりはないか?」
「っ、え、」
「決めるのは、ゆっくりでいい。だが俺は本気だ」
「風影様……」


ゆっくりと距離を縮める我愛羅。ドクドク、と自分の心臓がうるさく聞こえた。

周りが見守る中、我愛羅は再び口を開く。


「**、」
「あのー、火影様、私って当分砂に行く任務ってなかったですよね?」
「…は?」
「え」
「…マジかよ…」
「次行くのは雷だしな〜……お誘い、感謝しますが、すいません、あと、2、3ヶ月先まで任務が詰まってまして…当分砂には行けないんです…」


再びごめんなさいと頭を下げる**。まじかー…と呆れ笑う聴衆に、固まる我愛羅。ここまで言って、ダメなのか。



こうして、次の任務に旅立った**の、告白台無し記録は更新された。





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(我愛羅、お前は悪くないってばよ)
(よく頑張った方だと思うぜ?)
(次よ!次!)
(………はぁ、)


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