創設期 短編 | ナノ




「マダラ」
「…**か」
「柱間は?」
「あいつはなにやら会合があるみたいでな」
「そう」


柱間の姉で、俺の婚約者。そんな歪な存在の**。自分に厳しく他人に優しく、周りをよく見ている。常に一歩先のことを考えながらも目の前のことを疎かにしない、よくできた女。


「…ねぇ」
「なんだ」
「……」


俺の近くに遠慮がちに寄ってきてはペタリと隣に座った。唇を尖らせて俺を軽く睨んでいるあたり、構って欲しいらしい。気が強いこいつは素直に甘えることができない。


「…ねぇ」
「だからなんだ」
「わかってるくせに…」
「言葉にされないとわからん」


視線を右往左往させ、口を少し開いたと思えばすぐに閉じ、そんなことを繰り返しながら時間だけが過ぎる。


「…ぎゅ、て…してほしい…」


消えそうな声で呟く**。やっと言ったか、と小さくため息をついた。


「甘えたな姉だな」
「じゃあいいもん」
「こっちに来い」


身を引く**の腕を引っ張り、そのまま腕の中に閉じ込める。抱き込むように締め付ければ、俺の着物を握ってくる**。気が強いくせに、こういうところで可愛らしい反応をするから堪らない。


「なにかあったのか」
「……火影の姉として恥ずかしい、だってさ」
「父親か」
「うん」


忍の才に恵まれなかった**は、度々親から嫌がらせのように小言を言われていた。本人の前では強がっても、最後には俺のところに来る。昔は、嫌なことをすべて抱えて河原で1人、石を投げていたのが懐かしい。


「お姉ちゃんらしいかって言われたら、そうじゃないけど…」
「お前は立派な姉だ」
「マダラ…?」
「お前のことを邪険に扱うのはお前の親父など頭が硬いやつらばかりだ。柱間も扉間も、里のものたちも皆お前のことを尊敬している。」
「…どうしたの?今日は優しいね」
「そんなお前が嫁で、俺は誇りに思う」
「!」


初めて言った言葉。顔を真っ赤にさせて俯く**を見ると、たまには素直に言うのも悪くない。陽は落ちた。俺をつかんで離さない**を抱え、布団の上に組み敷いた。


「え、ちょ、!」
「そう言えば最近していなかったな」
「待って、夕ご飯まだ…!」
「後だそんなもの」
「そういうわけにっ、ん…!」


照れ隠しでうるさくなる口を塞いだ。わずかな抵抗を見せるが、腰を撫でると観念したようにわずかに口を開いた。


「いい子だ」
「…生意気」


後頭部を掴んで深く唇を合わせる。舌を絡めとれば**も負けじとねっとりと絡みついてくる。かすかに漏れる喘ぎ声。**の腕が俺の首へと回った。


「…いい顔だな」
「マダラもね」
「……」
「マダラ」
「なんだ」
「愛してる」
「…お前はいつもそうこっぱずかしいことを易々、っ…」


今度は、俺が言い切る前に**が俺の口を塞いだ。ねっとりとお返しとばかりに口内が犯される。執拗に舌を絡め取るその姿が愉快なくらい、淫らで、妖艶だった。


「…仕返し」
「本当に、お前は最高だな」
「言ってくれないの?」
「…はぁ」


にやりと歪んだ口。そんなこいつの頭をつかみ、耳元に口を持って行った。
息を吐くように告げれば、耳が弱いこいつはぴく、と体を震わせる。そのまま耳をぺろりと舐めると、**の体が固まるのがわかった。

さぁて、どう調理してやるか。




ねぇ、耳元で囁いて
(姉者〜!どこだ〜!)
(…柱間ァァ…!!)


prev | back | next
ねぇ、耳元で囁いて